第1章 FIRST AND START
講義が終わると、朔良くんはスタジオへと向かうと言った。雑誌のインタビューがあるとかで、面倒臭そうな表情。
それでも、歌うことは好きな様で柔らかい表情を浮かべていた。本当に歌うことが好きなんだと思う。
「今日も手伝いか?」
「うん。今日も伯母さんのお店に行くの。でも、来週には落ち着くみたい。」
「そう。ま、頑張れ」
何か朔良くん、機嫌良さそう……。私……頭撫でられてるし。朔良くんを見送ってから、フト思い出す。
朔良くんが気になるのは、同情からくるものかもしれない。今、私が居れば……ただの傷の舐めあいにならないだろうか?
でも、私の中で確実に朔良くんの存在は大きくなっている。助けて貰ってからずっと…………。
トラウマがある私に、朔良くんは優しかった。だから、優しくしてもらったお礼をしたい。
この日の放課後。いつもの様に、伯母さんのお店でお手伝い。
「貴女、よく働くし気立てがいいわ。ねぇ、お相手いないのでしょう?良かったら、紹介させて……」
いきなりの常連客からの申し出に驚く私……。でも、申し出を断ってくれたのは伯母さんだった。
「すみません。この子恥ずかしがりやであまりそういう話をしないのですが、イケメンの彼氏がいるんですよ。ね?」
同意を求められ、つい私は愛想笑い。だっていないなんて言ったら、推しきられそうだったから。
「伯母さん、ありがとう。助けてくれて」
「いいのよ。それより、いつ朔良くんは遊びに来てくれるの?」
「あ、近々だよ。今日、話したの」
伯母さん、朔良くんのことがお気に入りみたい。
「どうして、伯母さんは朔良くんを気に入ってるの?」
「あんな風にを気遣ってくれるし、優しいじゃない。それに、いざって時に頼りになるでしょ」
確かに……助けて貰ってばかりな様な気がする。
「誠さんみたいで、昔を思い出したわ」
誠さんと言うのは、伯母さんの旦那さん。伯母さんも旦那さんとラブラブだ。
家系なのかな…………でも、羨ましい。旦那さんも無口な人だけど伯母さんのこと凄く大事にしているもの。
もし、朔良くんとそうなったら…………なんて考えたら、心臓が跳ねた。
「あれ?何だろ…………これ」