第1章 FIRST AND START
朔良くんの言葉が頭の中がでぐるぐる回っていた時、急に真っ暗になった部屋。
「停電か…………」
朔良くんの冷静な声が、耳元で発せられた。
「真っ暗だな……ちょっと、こっちに来い……」
朔良くんは壁に寄り掛かり、その場に座り込んだ。私を伴って…………。
恥ずかしくて仕方無いのに、朔良くんは離してくれなくて…………今、朔良くんに寄り掛かったままです。ドキドキします…………。
「大丈夫か?」
「うん…………」
心臓は、早鐘打っているみたいで大丈夫じゃない様な気がしないでもないけど……危険はないかな。
ドキドキしていたのに、時間が経ったら落ち着いてきて…………身を起こそうとしたら叶わなくて……。
「じっとしてろ……」
「でも……寄り掛かってたら朔良くんが…………」
「真っ暗の中、無闇に動く方が危ないだろ」
確かに……なんて思ってしまう私。身を起こしかけたのに、結局は朔良くんに寄り掛からされてしまう。
「ご、ごめんね…………何か、迷惑かけてばかりな気がする」
「迷惑なんかじゃねぇよ。だから、大人しくじっとしてろ……」
「うん……」
言われるがまま、じっとしていると……心無しか、朔良くんの鼓動が早いことに気付く。でも、まさかね……なんて、直ぐに否定した。
朔良くんが緊張なんて…………そんなことを思ったら、つい笑いそうになる。至近距離にいるのに、何も見えないから余計な緊張はしなくて済む。
顔だけ上げれば、朔良くんが私の頭に顔を埋める形となった。
「どうかしたか?」
「ううん……」
ビックリして顔を下げれば……あれ?さっきより、回された腕が強くなった気がする?それに……私の頭、スリスリされてる様な気がしないでもない?
「……どうしたら………………だろうな」
それはそれは、小さな声が囁かれた。どことなく切なそうな声で、私の心がキュッとなった。
「…………このままいてくれ」
「えっ?」
消えそうな小さな声だった……。初めて耳にする、縋るような切ない声。
私は、雨音を聞きながら……ただ、小さく頷いた。