第1章 FIRST AND START
伯母さんのお店のキッチンを借りて作ったお弁当。伯母さんに冷やかされながら、作り上げました。
伯母さんの中では、朔良くんは私の彼氏に認定されています。幾ら違うと言っても、掛け合ってくれません。なので、諦めました。
今日は、母から新しいイギリスで発刊された料理本が届きました。それを見たら、作りたくなって……今に至ると言う感じです。
しっかり味見もしたし、伯母さんからお墨付きも貰えました。そして、来てしまいました……朔良くん家です。
明かり……点いていません。まさか、不在とは思っていなくて……軽くショックを受けています。
腕の中に抱えたお弁当箱。どうしようかと、うろうろしながら考えて居たんです。そもそも、いきなり訪ねて来たのはダメでしたよね……。
少しして帰ってきたので、無駄にならなかったのですが……確かに、連絡すれば良かったと後で思いました。
そして、今日も綺麗に完食してくれました。
「初めて食べる味だったけど、俺……好きかも。旨かった、サンキュ」
「お粗末さまでした。口に合って良かった」
また、新しい料理にチャレンジしようと思います。そこで、思い出しました。朔良くんが歌っていると言う事実を……。
「何か、言いたそうな顔してる……」
いきなり、言い当てられて目が開きました。
「あの…………ごめんなさい!!し、知らなかったとは言え朔良くんの声に気付かなかったし…………何か、偉そうなこと言ってしまったから」
「あぁ、聞いたんだな……ま、正直に言えば……傷付いた。あんた、いい声って言いながら全然気付かねぇし……」
さ、朔良くんを傷付けてしまった……。
「あ、あの…………ご、ごめ……」
「傷付けた分の詫びもしてもらわないとな」
朔良くん……何か、ニヤリとしています。私は絶望中…。
「なぁ、今週末……時間ない?」
朔良くんからのお誘いです。内容は、ライブのことでした。私が行くことを話すと、増々、機嫌が良さそうになりました。
朔良くんの生歌……どんな感じなのだろう?こんなにいい声だから、凄く素敵な……。
「俺たちは一番最後の出演だから、途中で帰ったりしたら……おしおきな?」
「えっ?おしおき……?」