第1章 FIRST AND START
「ねぇ、ピアスを人質って……」
朔良くんの姿は、直ぐに見えなくなった。逃げ足が早い。それにしても、朔良くん……モテるんだなぁ。
私って、人の美醜に本当に無頓着だったんだと教えられた気がした。
でも、さっき言われた…………
「何って顔…………してんだよ」
あの時の私、どんな顔をしていたんだろう?そして、更に、私は玲衣からの言葉に驚くこととなった。
私……今、学食で玲衣に詰め寄られています。話の内容は、玲衣が好きだと言うバンドの話でした。
「れ、玲衣……前に行った時に好きだって言っていた名前と違うような気がするんだけど」
「バンド名が変わったの。今は、Liar-Sって言うのよ。それより、檜山くんといつの間に知り合いになったの?」
私は、知り合った経緯を全て話した。あ、お泊まりしたことは言えなかったけれど。
私の話を聞いて、玲衣は落ち着いてきた様だ。
「あの無口でぶっきらぼうな檜山くんがねぇ?何か、意外……。でも、に何も無くて良かった」
「ありがとう。話さなくてごめんね?」
「ううん。私だって同じことをしたと思うもん。それより、一躍有名人になっちゃったね……」
「ご、ごめんね……」
チラチラと私を値踏みするかの様な視線を、さっきから幾つも向けられている。
「……また、迷惑ばかりだな」
「でも、檜山くんは言ってくれたんでしょ?乗り掛かった舟だって。だったら、気にしなくていいんじゃない?」
「でも…………」
「あ、そうそう。に登録した着メロ、Liar-'Sの曲だよ。檜山くんが歌っているの」
私は、ビックリして目を見開きました。そこで思い出しました。朔良くんに、この着メロを聞かれた時のことを。
私……何ってことを言ってしまったんだろう。それに、全然気付かなかった。お、怒っているかな……。更に、もう1つ思い出した。
「週末のライブって……」
「お忍びで地元のライブ会場に来るの。あ、キャンセルは無しだからね?」
正直、複雑だ…………見たいような見たくないような。朔良くんの反応が怖い。
「わ、分かったよ……」
あの朔良くんの生歌…………それより、全然気付かなくてごめんなさい。