第1章 FIRST AND START
久しぶりの講義に、気が向いたので行ってみた。そこで、視界に入ってきたのはさっきまで一緒にいたあいつの姿。
後ろ姿でも、間違いないと思う辺りどれだけ填まってんだって笑ってしまう。
あいつに声を掛けたら、痛いところを突かれた。そして、周りの視線に気付いたあいつは意味が分からない様な顔をしていた。
が、何かを思っては納得した様だ。一体、どんなことを考えたのやら。講義中は、ずっと黒板に夢中。
俺のことなんて、眼中に無しだ。何か、悔しい気がする……。見せてもらったあいつのノートは、綺麗に整理されていた。
講義が終わると、思い出したようで聞かれた。
「あぁ、ピアスか…………今は、持ってない」
「そう。じゃぁ、また時間が出来た時にするよ」
そして、あいつが差し入れの提案をしてきた。喜んで提案を受ける。スタジオから帰ってきた時の、楽しみが出来た。
「朔良くんって……モテるんだね」
それは、予想もしなかったあいつの言葉だった。
「はっ?何それ……」
「伯母さんがイケメンだって言っていたの。ほら、さっきの講義前だって女の子たちが騒いでいたし。」
「あんたはどう思う?」
「えっ?どうって…………私、あんまり人の美醜は分からないけど……朔良くんは優しいからモテるのは分かる」
やはり、予想の斜めの返答だ。それに、小さく息を吐いた。
「あ、あの……彼女が出来たらちゃんと教えてね?」
あいつが言った言葉を聞いて、俺はあいつを見た。そして、驚かされた。
「何って顔…………してんだよ」
「えっ?か、顔?私、変だった?」
「自覚無しかよ……」
首をかしげているあいつ。でも、あの顔を見て分かったんだ。
あんたがいい……そう言えたら簡単だろう。でも、今の自覚がないあいつに言っても無駄だ。
「ピアスは人質にする。俺に差し入れしてくれたら、いつか気が向いたら返してやる。じゃ、またな」
背後から、あいつが何かを言った様だったが分からなかった。