第1章 FIRST AND START
暫くして、あいつの重みを肩に感じた。顔色はまだ良くはないが、少しは落ち着くことが出来た様だ。
それにしても、簡単に俺を信じすぎてはいないか?俺だって、男なんだが…………。そんなことを思いながら、小さく息を吐いた。
力付くで押し倒せば、意のままに出来るだろう。でも、それは……こいつに、一生消えない心の傷を負わせ重い荷物を背負わせるだけにしかならない。
あいつを抱き上げ、ベッドに寝かせた。身を離そうとした時、何かに行動を遮られる。いつの間にか、捕まれていた服。
「ったく…………ハァッ……仕方無いな」
隣に寝転がり、俺も目を閉じた。
夜中、フト目を覚ました。ガタガタと体を震わせていたあいつに気付き声を掛けたが、どうやら意識は無い。
怖い夢でも見ているのだろうか?
俺はそんなあいつの額にキスしては、腕の中に抱き入れた。そんな俺に擦り寄ってくるあいつ。やがて、体の震えは止まった。
「……俺のモノになればいいのに」
思わず呟いてしまった言葉に、つい笑ってしまった。
「俺も、あんたの親父さんと同じだな……」
こいつが、俺だけしか見えなくなればいいのに……そう考えることで、俺も末期だと自嘲する。
「なぁ……あんたは、どうすれば手に入る?」
でも、俺の問い掛けに返事はない。
俺はただ、こいつを抱き締めては再び眠りにおちた。
どれくらい眠っていただろうか。腕の中で、モゾモゾ動く感触で目を覚ました。
「……起きたのか?」
「……はい」
小さな小さな声だった。視線を下げれば、真っ赤になったあいつがいた。
「少しは寝られたか?」
「……は、はい」
またしても、消えそうなか細い声。
「あ、あの……私、どうしてここに……」
俺が気だるげに説明すれば、土下座ばりの謝罪をされる羽目となった。朝から、全力の謝罪は堪えるものがある。
「もういい。あんた、抱き心地いいから、役得だと思ってるし……」
「だ、抱きっ!!?」
「あぁ、そういう意味じゃない。ま、細かいことは気にするな。それより、準備しなくていいのか?」
あいつは分かりやすいくらいに慌てては身支度をして、帰っていった。
「でも…………抱き心地、良かったな……」