第1章 FIRST AND START
朔良くんと分れ、マンションへと向かう。帰り際、気遣ってくれた言葉は嬉しかった。
何時もと変わらない町並み。マンションに入っては、直ぐに施錠する。
持っていっていたお弁当を、自宅で食べる。今週は、課題が多い。伯母さんの店の手伝いまで四時間ほど。
集中しては、課題を片付けていく。やがて、アラームが鳴り響いて時間に気付いた。慌てて身支度をしては、伯母さんの店に向かった。
三時間程の手伝いの後、店前の片付けをする。そこで、私は気付いてしまったんだ。そこへ鳴り響くLINEの音に、過剰に反応する私。
慌てて店内に戻る。でも、見付けてしまった私は……体の震えが止まらなかった。伯母さんに話すと、様子をコッソリと見に行ってくれた。
「ちゃん、本当に居たわ。警察に通報するから待っててね」
警察は直ぐに駆け付けてくれたけれど、あの私を見ていたストーカーは逃げた後だった。
「ねぇ、ちゃん。誰か力になってくれる人はいないの?一人でいるのは危ないわ。」
だからと言って、玲衣にお願いする訳にもいかない。玲衣だって女の子だ。
「こういう時に、彼氏でも居ればいいのだけど」
「か、彼氏なんて……」
「でも、誰かいないの?」
そこで、フト、朔良くんを思い描く。嫌……こんな面倒事に捲き込めない。恩人に更に迷惑かけるのは心苦しい。
でも、今の私には他に誰も思い浮かばなかった。そこで、スマホのライトに気付いた。
画面を開けば、思い描いた朔良くんからのLINEだった。朝のサンドイッチの礼だった。私は暫くの間、その画面を見詰めていた。
気が緩むと、泣いてしまいそうだ。伯母さんは、どうしようか悩んでいる。
体の震えが止まらず…………無意識だった。朔良くんへの通話ボタンを押していた。
「……はい」
少し驚いた様子の声。しかし、肝心の私は……声を発する事が出来なかった。
「もしもし?……だろ」
私の名を口にした瞬間、悲鳴に近い声で朔良くんに助けを求めていた。
迷惑を掛けるとか、そんなことは私の頭から綺麗さっぱり抜け出してしまっていたんだ。
怖くて、怖くて……誰かに縋りたくて仕方無かった。