第1章 FIRST AND START
何度も入力し直した文面。固い文面に笑われたりすることのない、朔良さんからLINEの返信が来ました。
当たり障りない返信内容でしたが、最後に卵焼きが1番好きだと書かれていました。正直に嬉しいです。1番、練習をしたものですから。
それにしても、まさか男の人を名前呼びする時が来ることも、男の人の連絡先を入手することにも驚きです。
フト、綺麗に完食してくれた朔良さんを思い出しました。やはり、あんな風に綺麗に食べてくれるのは嬉しいです。
「あ、また来た……あっ!お弁当箱……私も忘れてた。……プッ」
私も、緊張して忘れていたんだと思います。その事に、ついおかしくて笑ってしまいました。
「朔良さんって強面だけど、優しい人だな……」
冷蔵庫に置いておいたサンドイッチ食べてくれるといいなぁなんて思いながら、あんな怖いことがあったのに私は落ち着いていられた。
翌朝、玲衣に昨日のことを話すと、凄く驚き凄く心配してくれました。
「何もなくて良かったよ。本当に、そのいい声のお客さん様々だね」
「うん」
玲衣にまで私が付けた呼名が浸透してしまっていて、その事につい笑ってしまう。
「あ、教授が来た!」
講義が始まり、会話は終わった。そう言えば、名前を聞いたことを言いそびれたことを思い出した。また、次の機会にでも話そう。
講義が終われば昼休み。待ち合わせの中庭へと行けば、野良猫と遊ぶ朔良さん……あっ、そうだった朔良くんだ。
「こんにちは」
「あ、あんたか。これ、弁当箱。悪かったな、わざわざ。それと、あのストーカーは大丈夫か?」
「はい。今のところ大丈夫です。心配して頂いてありがとうございます」
私の返答に、ジロッと視線を向ける朔良くん。
「ガチガチの敬語だな。同じ年なんだから、タメ口でいいって言っただろ」
「は、は……うん。朔良くん、大人びて見えるからつい……」
「何それ……俺がジジイだって言いたい訳?」
私は、慌てて否定した。
「こ、強面だと思うけれど、そこまで年上には思って…………」
「強面?」
「あっ!!?」
復唱されて、私は私の失言に平謝りした。