第13章 長期合宿前編
合宿3日目。
音駒は森然と試合をしている中、隣コートの烏野対梟谷の試合をチラッと見ながら、ふふっと笑う。
「なんだぁ?烏野が気になるか?」
隣に座ってる猫又先生も同じように隣のコートに目を移す。
「昨日、黒尾さんが蛍…11番の月島にブロックを教えてたんです。梟谷のエース相手にやってくれるんじゃないかと…」
言いかけると丁度、光ちゃんがスパイクを打つ所だった。
蛍がブロックに跳んで、光ちゃんはフェイント。…あれ?光ちゃん逃げた?
「逃げたんじゃねぇ避けたんだ!上手に!避けたの!」
赤葦さんにも突っ込まれたのか、光ちゃんは大声で否定してる。
「ハイハイすみませんでしたぁーっ!」
…光ちゃん、謝ってる…んだよね?
「いやぁーこれはまた」
「蛍も殻を破りましたかね」
ニッと猫又先生を見ると、楽しそうに笑ってる。
黒尾さんもニヤリとしてやったり顔だ。
昨日蛍に、煩い梟を黙らせろ!とか言ってたもんね。
そして午後からの烏野対音駒の試合。
翔陽と飛雄の新しい速攻はまだ完成しないなぁ。
…あ。
「今…トス落ちなかった…」
飛雄は翔陽の打点で止まって落ちるトスを練習してたはず…と思っていると、
「オイ!」
翔陽の怒声が聞こえた。
「今手ェ抜いたなっ?」
「手を抜く…?俺が?バレーで?」
「今の落ちてくるトスじゃなかった!」
翔陽は気づいたんだ。…気づくか、一番近くで見てるんだもん。
ちょっとすみません。と猫又先生に断って2人に近づく。
「今のは飛雄が悪いかなぁー?」
そう言った私に2人はバッと振り向く。
「翔陽はここしばらく気持ち良くスパイクが決まってないでしょ?そのストレスを懸念して、飛雄が無意識に翔陽になんとか打たせようとした、ってこと」
そう言うと飛雄はあからさまにショックを受けてる。
無意識だとしてもバレーで妥協したくないんだろうな。
「止めんな影山!」
私も翔陽に続く。
「そうだよ、飛雄なら出来るよ。スパイカーが欲しいトスに100%応える努力、するんでしょ?」
飛雄は何か吹っ切れたように、眉間の皺が無くなった。