第15章 長期合宿後編
どれくらい経っただろうか。
突然、携帯の着信音が鳴った。
びっくりしたのと、思い出して恥ずかしくなったので、慌てて離れると携帯を確認する。
「俺じゃないけど…優希?」
頷くと、出ていいよ。と言ってくれる。
お言葉に甘えて電話に出ると、
『もしもし優希?そろそろ電気消すけど大丈夫かなって…』
「あ、はい。大丈夫です。すみません」
『そう?ならごゆっくり』
後ろがなんとなくガヤガヤしてるけど、電話はそのまま切れた。
大丈夫だった?と心配そうな赤葦さんに、
「大丈夫です。電気消すね、ってだけだったので」
と言えば、
「そっか。…でも俺らもそろそろ戻ろうか」
と頭を撫でられる。
今までも頭を撫でられることはあったけど、なんかくすぐったい。
そうですね。と立ち上がると、はい。と手を差し出される。
少し恥ずかしくなりながらも手を取ると、そのまま手を繋いで校舎に戻る。
男子は2階で、女子は3階を使っているので、階段で手を離そうとすると、キュッと手に力が入って、
「部屋の前まで送るよ」
と、赤葦さんはそのまま階段を昇り始めた。
「ありがとうございました。赤葦さんも寝るの遅くなっちゃいましたね、すみません」
マネ部屋の前で向かい合ってそう言えば、
「大丈夫だよ。誘ったの俺だし」
でも…と言った赤葦さんを見上げる。
「赤葦さん、は嫌だな」
「…け…京治くん…」
恐らく赤くなっているであろう火照る顔を両手で隠すと、私の頭を撫でながら、赤葦さ…京治くんは満足そうに微笑む。
「あと、敬語も無しね」
なんでそんなに余裕なんだろう。
「心がけます…」
私には全く余裕ないのに。
じゃあおやすみ。と言って手を振る京治くんを、同じように手を振って見送ると、私はそのまま部屋に入って自分の布団に潜り込んだ。
未だに顔が熱い。
…夢じゃないよね?
明日まだ1日あるのに…どうしよう。
普通にできるかな…
いや、普通にするしかないよね。
変に気合いを入れて眠りについた。