第13章 長期合宿前編
「…で?」
私の頭の上にハテナが浮かぶ。
自主練を切り上げて食堂で夕食を食べている中、黒尾さんが突然切り出した。
「体育館入って来た時。なんで顔赤かったんだ?」
何かあったんだろー。とニヤニヤしながら聞いている黒尾さん。
赤葦さんと蛍は黒尾さんと同じく気になるみたいだし、光ちゃんはご飯に夢中だ。
「なにもないですよ?」
まさか研磨さんに告白されました、なんて言える訳ないじゃん。
告白…だったよね
「何もないって事はないだろー」
「俺も少し気になるな」
「黒尾さんしつこいと思うよ」
「おいツッキー失礼な!」
「誰かに告白されたとかじゃねーの?」
…光ちゃん…話聞いてたんだ…。
「たしか初めて告られたって時も顔真っ赤にしてたよーな…」
「光ちゃん!余計な事は言わなくていいから!」
「誰だっ!誰に告られた?」
誰だ誰だと黒尾さんが煩いけど、ご馳走様でした。と私は席を立とうとする。
「待て優希!今日って事は合宿中の誰かだよな?」
「優希と仲良いのって誰が居たっけ」
「梟谷か音駒か…烏野?」
ちょっと待って。黒尾さんは分からないでもないけど、赤葦さんも蛍もこういう事に無関心ってか、興味無いと思ってた。
どうやって切り抜けようか考えていると、
「俺が優希に告白したんだよ」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「…ど、どうしてここに?」
「喉渇いたから飲み物買いに」
振り向いて聞くと、研磨さんは食堂の外にある自販機を指差して答える。
「研磨っ!?…なっ、おまっ…は?」
黒尾さんは言葉になってないし、赤葦さんと蛍は驚いて目を見開いている。
「―――…」
研磨さんは私の耳を塞いで何か言った後、じゃあね。と言ってさっさと食堂から出て行ってしまった。
「おーい、そろそろ部屋戻るぞー」
何を言ったか気にはなるけど、固まってる3人を置いて光ちゃんと部屋に戻った。
ーside木兎ー
"俺だって本気だから。想ってるだけじゃ伝わらないよ"
孤爪…本気の目だったな。
俺としては優希の意思を尊重したいけど…孤爪に先越されたあの3人はどうするかな。
優希には幸せになってほしい。
でもとりあえず優希を傷つけなきゃそれでいいか。
…って見守ってやる俺って大人じゃね?
ーsideendー