第13章 長期合宿前編
「光ちゃんっ」
勢いよく体育館に入った私は周りもよく見ずに光ちゃんに抱きついた。
「遅かったな。ってか、どしたー?」
珍しいな。とは言いながらも引き離さずに頭を撫でてくれる光ちゃんは相変わらず優しい。
…ちょっと落ち着いたかな。
ふぅ、と顔を上げれば
「あれ?蛍が居る」
「僕が居ちゃだめなの」
「んーん全然。嬉しいよ」
練習が終わった後、光ちゃんの誘いを断ってたけど、蛍も自主練しに来たってことだもんね。良い事だ。
ニコッと笑えば、あっそ。と蛍はそっぽ向いてしまった。
「そんでお前らはいつまでくっついてんだ?」
黒尾さんに言われて、光ちゃんに抱きついたままな事に気づいた。
「あ、ごめん」
「気にすんな。けど優希顔赤かったぞ。大丈夫か?」
「大丈夫だよ〜」
光ちゃんなら誤魔化せる。
「そうか?…ならいいや。バレーしようぜ」
ほら、誤魔化せた。
「何かあったの?」
「優希が顔赤くするなんて珍しいよね」
「木兎は誤魔化せても俺らは誤魔化せねぇぞ」
…蛍…赤葦さん…黒尾さん…
そうだよね、この人達は誤魔化されてくれないよね。
「何でもないですっ!それより無性にバレーしたいんで早くやりましょ!」
3人は納得してない表情だったけど、黒尾さんの
「後でちゃんと教えろよ!」
という一言で自主練を再開させた。
「あと1人居れば3対3できるのになー」
と言いながら、赤葦さんのトスを光ちゃんが打って黒尾さんと蛍がブロック、その後ろで私がレシーブするのを続けた。
黒尾さんは蛍にブロックの仕方を教えてる。
他校の後輩にも丁寧に教える黒尾さんはやっぱり面倒見が良いと思う。
これで明日の練習中、蛍が光ちゃんのスパイク止めたら面白い…じゃなくて、蛍も皆と同じ様に殻を破り始めたって事だ。
明日が楽しみだなー、烏野と梟谷が試合する時は審判がいいなー、とブロックを抜けたスパイクをレシーブし続けた。