第13章 長期合宿前編
2日目も試合試合試合。
私は相変わらず音駒のマネやってるから烏野をしっかり見れないけど、とりあえず毎回ペナルティの坂道ダッシュしてるみたい。怪我だけはしないといいな。
昼休憩が終わって少しした頃。
「皆さーん、森然高校の父兄の方からスイカの差し入れでーす」
たくさんのスイカが乗った大皿を持って他のマネさん達と体育館に入ると、スイカでテンションが上がったのかほぼ全員が目を輝かせてこちらへやってくる。
最初は自分の学校に持って行くと予め決めていなかったら、わちゃわちゃしてたなーと思いながら音駒の所へスイカの皿を持って行く。
え?だって烏野に3つも持って行っても…ね。それに音駒マネいないし。いや、今は私が音駒のマネか。
「優希ー!俺一番大きいのちょーだい!」
はいどーぞ。と、走ってきたリエーフに持っていたお皿を差し出すと、悩んで真ん中のスイカを取っていく。
「リエーフ!てめぇが一番に取ってんじゃねぇよ」
「まあ、たくさんありますし。黒尾さんもどーぞ」
「おう、ありがとな」
黒尾さんは1つ取ると烏野の方へ歩いて行った。
「あ、研磨さん取ってないですよね」
「うん…ありがと」
音駒に一通り渡すと、まだ余ってるスイカを持って欲しい人を探す。
「まだスイカありますよー」
「優希!いっこくれ!」
「あれ?光ちゃんもう食べちゃったの?」
はい。とお皿を差し出す。
「おう。あ、あかーし食う?」
「いただきます」
赤葦さんは私の方をちらっと見ると、
「優希は食べたの?」
お皿からスイカをひとつ取って
「切った時に端の方を食べました。甘くて美味しいですよね」
「真ん中はもっと甘いよ」
はい。と手に取ったスイカを私に差し出す。
ん?と首を傾げると、あーん。と言いながらスイカを近づけてくる。
は…恥ずかしい…。
いや、光ちゃんなら多分何にも思わないんだろうけど、赤葦さんは…だめだ。照れる。
うーん…よしっ!
覚悟を決めて、赤葦さんが差し出すスイカにカプっとかじりつく。
「あ、ほんとだ。すごい甘い」
でしょ?と赤葦さんは私が一口食べたスイカをかじりながら空いている方の手で私の頭を優しく撫でる。
ちらっと見上げれば優しく微笑んでる。
赤葦さんが無表情って言ったの誰っ?
凄く優しく微笑むんですけど!
…心臓が煩い。