第12章 手術そして夏休み
「優希ー!自主練しよーぜ!」
練習が終わってから光ちゃんの自主練に付き合うようになって1週間。
私がバレーを始めて1週間。
始めた、っていうのはちょっと違うかな。再開した、っての方がしっくりくるかも。
少しだけなら思いっきり跳んでも大丈夫みたい。
「私またブロック跳ぶのー?」
「おう!あかーし!トス!」
しょうがないなーと言って、ネットを挟んで向かい合う。
「止めるからね」
ニッと挑戦的に笑えば、やってみろよ!と光ちゃんも同じ様に笑う。
「じゃあ木兎さん、10本止められたら終わりですよ」
赤葦さんの言葉にやる気になった光ちゃん。
そして
「10本中10本!はい、おーわりっ」
「あかーし!優希!もう1本っ!」
「駄目ですよ」
赤葦さんは光ちゃんの我儘をバッサリ切り捨てて私に向き直る。
「ねえ優希、俺のトスどうかな…?」
「綺麗なフォームから完璧に上げるトス。素晴らしいと思います」
私も打ってみたいなぁ…と零せば、
「打つ?俺のトス」
「いいんですかっ?でも…今日は難しいかなぁ…」
そう言って膝をさすれば、
「それじゃあまた今度ね」
赤葦さんは微笑みながら、私の頭を撫でてくれた。
あれ…?今の笑顔…
「無理はだめだぞっ!優希はもう終わりだっ!」
「分かってるよ」
「木兎さんはまだやるんですか?」
「おう!あかーし!トス!」
「ちょっと休憩したらレシーブに入るね」
そう言って2人のボトルを持ってドリンクを追加しようと体育館の外へ出た。
帰ってきても光ちゃんはスパイクを打ち続けている。
赤葦さん凄いな。光ちゃんの事熟知してる。性格、好み、弱点まで知ってるんじゃないかな。
「優希、大丈夫?」
「大丈夫なら入るか?」
「大丈夫です。レシーブ入るね」
それからは光ちゃんのスパイクをレシーブし続けた。
「くっそー!優希すごいな!全然ブランクねぇじゃん!」
「いや、ブランクだらけだよ…」
「木兎さん最後まで綺麗に決まらなかったですもんね」
「あかーし!落とさないで!」
あははーと笑いながら3人で帰路につく。
明日から長期合宿だ。
烏野の皆に会える。