第12章 手術そして夏休み
最近、あの夢をよく見る。
小さい頃一緒にバレーをやった、けいじくん。
彼はどんな男の子になっているんだろう。
私より少し背が低かったから、同い年か…年下かな…?
「優希ー?何考え込んでんだー?」
「何でもないよー。ただ最近よく同じ夢を見るんだよねー」
「どんな?まさか怖い夢かっ?」
「ううん、小さい頃一緒にバレーやった男の子の夢」
残念でしたー。と部活へ行く道すがら、隣を歩く光ちゃんに笑いかける。
「なにっ男だとっ?俺よりカッコイイのか?」
何故か焦る光ちゃんに
「さあ、どうだろうねー」
と言って笑えば光ちゃんも笑う。
梟谷に着くと、光ちゃんは荷物を置きに部室へ、私は先に体育館へ向かう。
「失礼しまーす…」
知らない体育館に1人で入るのは緊張する。
あれ?そういえば何で体育館開いてたんだろ?
監督?いや、部員のが早いから普通は主将が開けるか。
光ちゃんが主将だよね?でも鍵持ってなかったし、むしろまだ体育館に来ていない。
え、なんで私体育館に入れたの?
1人で考えて怖くなってきた私は、やっぱり光ちゃんを待とうと体育館から出ようと振り向いたら…壁。
うぷっと鼻をぶつけて気づいたのは、壁じゃなくて人だったってこと。
「あ、すみません」
「いや、大丈夫?」
鼻を抑える私を心配してくれるその人を見上げると、いつかの副主将さん。
ああ、彼が体育館の鍵を持ってたのか。
1人で納得していると、
「優希…だよね。今日は見学?」
「あ、はい。名前覚えててくれたんですね」
「もちろん。…というより、俺はずっと前から知ってたよ」
ずっと前ってどういう事…?
「赤葦さんは…」
私のことどこまで知ってるんですか?と聞こうとしたところで
「おーっす!あかーし!早ぇーな!」
「あ、木兎さん。おはようございます」
光ちゃんに遮られた。
ま、いっか。聞く聞く機会はきっとあるだろう。
長期合宿までの1週間はきっと梟谷に来る事になるだろうから。