第2章 ようこそ烏野排球部へ
試合再開。
烏野チームがレシーブを上げた途端に日向くんが走り出す。
さあ、誰を使うか、と思った瞬間、既に飛んでいた日向くんに合わせるような超速攻パス。
影山くんが完璧に合わせた。
あの技術とセンス…天才ってやつか。
「ウォい!!今なんでそこに跳んでた!ちんちくりん!」
繋心…ちんちくりんって。
「ど…どこに居てもトス来るから…です」
日向くんが答えると
「なんなんだお前ら変人か!」
ふふ。あ、笑っちゃ不味かったかな。
いいや、蛍も後ろでププッって嫌味な笑い方してるし。
いや、でも、面白い。
圧倒的才能のある影山くんと、信頼と安定のある菅原さん。
繋心の顔をチラッと除く。
ニヤリと怪しい笑い方して武田先生に怖がられてるけど、これは楽しそうな顔だ。
「いいじゃねぇか、今の烏野」
…ほらね。
1セット目は町内会チームの勝ち。
2セット目が始まってすぐ、東峰さんのスパイクが日向くんの顔面に直撃して、後頭部から床にぶつかった。
「日向っ!!」
みんなが駆け寄ると同時に私もノートとペンを放り投げて駆け出した。
「うぅー…」
「あ、生きてる」
「大丈夫かっ」
「大丈夫かあああ!ゴメンなあああ!」
みんなが心配する中
「どう考えてもボケっとしてたコイツが悪いでしょ」
蛍だけは平常運転だ。
「あっ、だいじょぶです。スミマセン」
日向くんがガバッと起き上がった。
「日向くん!いきなり起きちゃだめ!何で頭打ったか覚えてる?」
いきなり出てきた私に皆びっくりしながらも、日向くんは答えてくれる。
「えっと、旭さんのスパイク顔面レシーブして、そのまま…倒れて…」
「手足の痺れや頭痛は?」
「ない…です」
これ何本?と指を3本立てて聞くと、3本。とちゃんと返事が返ってくる。
「とりあえず、大丈夫かな」
ホッと一息つくと同時に、今の状況を冷静に思い出す。
ぐるっと見回すと皆の目が私に向いている。
(私…場違いじゃない?)
「失礼しましたっ」
慌てて繋心の所へ戻ると、後ろから
「ありがとうっ!」
と日向くんの声がする。
振り返ってニコッと笑うと、すぐに繋心の隣へ戻った。
ああ、いきなり飛び出しちゃって…恥ずかしいな。