第2章 ようこそ烏野排球部へ
試合が始まる。
ついノートを広げて目の前の試合の気づいた点を書き出していく。
名前はさっき武田先生に聞いたから大丈夫。
ノートにメモしたし。
うん。
菅原さんは安定したセッターだ。
お、影山くんと日向くんの速攻速い。
あれ?でも今…日向くんって…?
向こうでは東峰さんと西谷さんが何か話してる。
ここからだと何も聞こえないけど、西谷さんの顔つきが変わった。
町内会チームがギリギリ繋いだボールを東峰さんが打つも、ブロックに捕まってしまう。
が、西谷さんが飛び込んだ。上手い。
「…だからもう一回トスを呼んでくれ!エース!!」
わお、カッコイイ。あのブロックフォローも相当練習したな。
きっと、東峰さんの為に。
上がったボール。誰に上げようか迷ってる菅原さん。
「菅原さん!もう一回!決まるまで!」
影山くんの声に一瞬びっくりする。
菅原さんは…悩んでる。
それだけ深いトラウマか何かなのか。
トラウマは自分で克服するしかない。
でも、手助けすることはできる。
さあ、誰に上げる。
「スガぁー!!もう一本!!」
東峰さんの声が響き渡る。
「旭…!」
菅原さんの綺麗なトスに合わせて飛ぶ東峰さん。
おお!東峰さんが自分で克服したか。
決まってニッコリ笑い合う菅原さんと西谷さん。
それと恥ずかしそうな東峰さん。
ああ…いいな。
私にもあんなリベロがいたら。
あんなセッターがいたら。
あんな素敵な仲間がいたのなら。
バレー…辞めてなかったのかな……
-said繋心-
「いやぁーすごいっ!ブロックされたボールが拾えるなら恐いモノなしですねっ!」
先生が興奮気味に言っているが、そんなのは無理だ。
「何言ってんだ。あんなもん毎回拾えるワケねぇだろ。ただ…後ろにはちゃんと仲間がいるのだと"わかってるかどうか"で気持ちは全然違うモンさ」
俺は先生に言いながら、隣に座っている優希をチラッと見る。
見た目は普段通りだが、ペンを握る手に力が入ってる。
(やっぱり連れてきたのは失敗だったか…?)
こいつにはバレーから離れて欲しくない。
プレイヤーとしては無理かもしれないが、どうにか繋がりを持たせていてやりたい。
(ま、所詮俺の自己満だがな)
優希がノートに何かを書き出したのを見て、俺はコートに視線を戻した。
-saidend-