第2章 ようこそ烏野排球部へ
もはや無意識といった人間観察をしていると、繋心は何かを考えている。
「あとはセッターか…俺やりたいけど、外から見てなきゃだしな。優希やるか?」
繋心は何でもないかの様にさらっと聞いてくるが、私はぶんぶんと首を横に振り拒否する。
「お前らの方から一人セッター貸してくれ」
繋心の声に、少し考えた泣きボクロさんが歩き出す。
「スガさん!?」
「俺に譲るとかじゃないですよね。菅原さんが退いて俺が繰り上げ…みたいの、ゴメンですよ」
周りがびっくりして坊主の人が声を上げる中、黒髪ストレートの目付きの悪い人が静かに問いかける。
「…俺は、影山が入ってきて、正セッター争いしてやるって思う反面どっかで…ほっとしてた気がする。セッターはチームの攻撃の軸だ。一番頑丈でなくちゃいけない。でも俺はトスを上げることに…ビビってた…。俺のトスでまたスパイカーが何度もブロックに捕まるのが恐くて、圧倒的な実力の影山の陰に隠れて…安心…してたんだ…!」
泣きボクロさんは悲痛な声で顔を歪めながら話し続ける。
「スパイクがブロックに捕まる瞬間考えると今も恐い。けど!もう一回俺にトス上げさせてくれ、旭」
泣きボクロさんは顔を上げて強面さんを見る。
強面さんは複雑な表情のままだが、泣きボクロさんと金メッシュさんと一緒にコートに入った。
うん、とりあえず誰かに名前を聞こう。
ややこしくなってきた。