第10章 いざ東京へ
音駒のベンチで記録を取りながら試合を見る。
相変わらず安定感のある守備だ。レシーブに穴がない。
いや、穴はあった。リエーフだ。
リエーフのムチみたいなスイングのスパイクは凄い。
高校からバレーを始めたって言ってたけど、もともとの才能と身体能力、あとは身長だけでバレーができてる。
ただ、レシーブはまだまだだ。あとブロックとサーブも。
とりあえず音駒でレギュラー定着させるためにはレシーブだな。
チラッと隣コートの烏野を見ると、やっぱり何かが足りない。
あの変人速攻がないと烏野は厳しいかな。
森然との試合に勝って休憩をしていると、ギィーと体育館の扉が開く。
「主役は遅れて登場ってか?腹立つわー」
黒尾さんの言葉に、研磨さんと扉の方を見る。やっと来た。
「てか、烏野はTシャツのセンスどうした」
黒尾さんの指差す先を見る。
龍先輩の"東のサムライ"、飛雄の"セッター魂"。
そういえば夕先輩はいつも四字熟語のTシャツ着てたっけ。たまに怪しいのあったけど。三点倒立とか。
「さぁ」
私にはそう答えるしかできない。
そして生川との試合。時間的にもこれで最後だろう。
烏野は赤点コンビが入って初勝利したみたいだし。
25ー20
よし、勝ちで終われた。
「リエーフ、また打点バラバラだったよ。研磨さんが上手く合わせてたけど」
「うえっまじ?優希はよく見てるなー」
「リエーフは背高いんだから、打点も高い位置で打てるよ。私はそう信じてる」
「優希にそう言われたら俺頑張るっ」
「じゃあレシーブも同じくらい頑張ってね」
にっこり笑うと、うげ。と顔を顰めながらも、頑張る。と言ってくれる。
「いやぁ、リエーフは優希に懐いたな」
後ろから聞こえた黒尾さんの声に振り向くと、
「だって俺優希の事好きですもん」
そう言って後ろから私を抱きしめて頭に顎を置くリエーフ。
「リエーフ重い」
そう3人で騒いでいると、懐かしい声で名前を呼ばれた。
「優希!」