第9章 期末テスト
暫く俯きながら牛島さんのジャージを握り締めて耐えていると、さっきまで聞こえていた翔陽と飛雄の声が聞こえない。
あれ?と思っていると牛島さんが止まって、私は降ろされた。
ここはどこだ?体育館?
それにしても乗り物酔いが…。…乗り物?でいいのか?
「牛島!この子は誰だ?何で連れてきた」
「岡崎優希です。着替えてきます」
そう言って体育館を出て行った牛島さん。
残された私と、見知らぬ男の人。
「いきなりすまないね。俺はコーチの斉藤。君は舞姫と呼ばれてた、あの岡崎優希かい?」
「あの、が何かは知りませんけど、舞姫と呼ばれてたのは昔の事です」
そうか。と斉藤さんが何かを考え込んでいると、ボールが外に飛び出して、外からは翔陽の声が聞こえた。
「コンクリート出身、日向翔陽です。あなたをぶっ倒して全国へ行きます」
連れが来たみたいなので失礼します。と斉藤さんに告げて体育館の外に出る。
「あっ優希居た!帰るぞ」
「あ、うん」
失礼します。と牛島さんに言って翔陽について行く。
「及川さんが県内で最強のセッターなら、それを越えるの俺なんで」
飛雄も牛島さんに宣言してる。
何があったか知らないけど、2人とも面白いじゃん。
「何かあったの?」
「青城は及川さん以外弱いんだと」
「県内の決勝にも残れないヤツが何言ってもどうとも思わないって」
「ああ、それで2人とも宣戦布告してたのね」
「まあ実際には、白鳥沢に勝てない青城に勝てない烏野だけどな」
「どっちも倒せばカンケーない」
「ふふ、わかってんじゃん」
「だから東京に行く。強くなるには強えやつとたくさん戦んのが一番だろ」
翔陽も飛雄も強気で良い目をしてる。
「そうだね。でも、その前にテストだけどね」
と言えば2人は一瞬固まって、帰って勉強だーと言いながら走って行った。
「頑張って〜」
2人の背中に手を振りながら叫べば、2人は振り返って手を振りながら、翔陽は飛び跳ねながら、じゃあ明日なーと叫び返される。
あーあ、帰るのめんどいな。
スマホを取り出して繋心に電話を掛ける。
「もしもーし、迎えに来て」
『あ?お前どこに居んだよ?』
「白鳥沢学園」
『なんでんなとこに』
「拉致られた」
『はあ?』
迎えに来てくれた繋心に一から話して怒られて、歩いて帰るよりめんどい事になった。