第8章 閑話にー伊達工業
「それにしても本当に面白いな、あんた」
「あんたじゃなくて優希です」
「ははっ、悪い悪い」
そう言いながら私の頭をポンポンする二口さんは、本当に面白がってるのかずっと口角が上がってる。
「それより練習再開しなくていいんですか?」
「優希はもう帰んの?」
質問に質問で返された。
「帰りますよ。もともと青根さんに届け物があっただけですし」
と答えた所で思い出す。
「あ、そういえば青根さんにも名前名乗ってなかったですよね?改めて、よろしくお願いしますね」
電車の中で結構話したけど、名前はさっき初めて言ったかも!と思って青根さんの方を振り向くと、青根さんはまたペコっとお辞儀をしてくれた。
「優希、練習見てかない?帰りは送るし」
二口さんの言葉に、ほえ?と間の抜けた様な声が出る。
「少しでも情報、知りたくない?春高予選で当たるかもだろ?」
「いや、でも…」
少し戸惑っていたが、青根さんも頷いてるし。本当にいいのかな?
「じゃあ、ちょっとだけ…」
結局誘惑に負けてしまった。
すごい。さすが鉄壁。
3年生は引退したって言ってたけど、IH予選で戦った時と同じくらい、いや、気持ち的にはそれ以上かもしれない。それくらい凄まじい、広くて高い壁。
前から鉄壁の中枢だった青根さんと二口さんに加え、新しいセッターも高い壁だ。
ただ…初心者なのかな。レシーブもトスもまだまだな感じ。
でも…あの子が成長したら本当に恐いな。