第7章 東京に向けて
夜、光ちゃんに連絡しようと携帯を取り出す。
メール送るだけなのに緊張する。
勇気を振り絞って、一言だけ送る。
《久しぶり、元気?》
ふぅ、と一息つくと、すぐに既読になって返事が返ってくる。
〈おう、久しぶりだな!俺は元気だぞ!優希も元気にやってるか?〉
《うん。実はね、私バレー部に入ったんだ》
意外とすらっと言えたぞ。
既読になったけど…返事が来ない。呆れてるのかな。
ごめん、と打った所で電話が鳴る。光ちゃんだ。
「はい」
『まじか!でもまだ治ってないんだろ?』
「あ、うん。だから男子のマネージャー」
『まじか!俺も男子バレー部だぞ!』
「ふふ、光ちゃんさっきから、まじか!しか言ってない。光ちゃんがバレー部なのは知ってるよ」
『まじか!あ、また言っちまった。じゃあ俺が主将やってるのは知ってるか?』
「え、そうなの?それは知らなかった。光ちゃんが主将で大丈夫なの?副主将の人困らせてない?」
『失礼だなっ!副主将は2年だけどしっかりしたヤツだぞ!』
「それなら安心かな」
あはは、と笑った後、電話の向こうで光ちゃんが真剣な声になる。
『優希、本当に大丈夫なのか?』
「うん。今のチームメイトなら大丈夫。だから私、手術するよ」
『そうか。優希がそう思えるなら、俺は応援するし手術だってすべきだと思う』
「うん、ありがとう」
すると急にまたテンションが上がる。
『じゃあこっち来るんだろ?またウチに住むか?』
「そうだね。夏休み目安だけど、またお世話になると思う」
『おう。こっち来たらたくさん遊ぼうな』
「いや、私リハビリに通院するし。それに光ちゃんは部活でしょ?」
『そうだった!』
「しっかりしてよ、主将。部活覗きに行ってもいい?」
『当たり前だろ!毎日でも来い!』
「ふふ、ありがと。じゃあまた連絡するね」
『これからはちゃんと連絡しろよ。俺寂しかったんだからな』
「わかった。じゃあ、おやすみ」
『おう、じゃあな』
電話を切って息を吐く。
良かった。今まで通りの光ちゃんだった。
携帯に向かって、ありがとう。と呟いてから眠りにつく。