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【HQ】陽のあたる場所へ

第7章 東京に向けて


「おい、ちょっといいか。お前らに言っておかないといけない事があるんだが…」
繋心が切り出した。皆も聞く体制に戻った。
優希、と呼ばれて繋心の隣へ移動する。
緊張する。こわい。どうしよう。ふと潔子先輩と目が合うと、優しく頷いてくれる。
よし、と深呼吸して話し出す。


「私は小学生の頃、バレーで全日本に選ばれました。中学に入ってからは試合でも負け無しでした」
「もしかして…舞姫かっ!」
叫んだ飛雄に頷いて答える。

「でもそれを妬んだ人達に虐められた。それで、ポールで殴られて…膝を壊したんです。その頃は大好きだったバレーが、一瞬で出来なくなった。仲間だったハズの中学のチームメイトにまで見離されて、私はバレーから逃げました」
皆が息を呑むのがわかる。

「でも、私はここで皆に出会えた。バレーに向き合えた。感謝してるんです。だから…」
一旦言葉を切って皆を見回す。
「だから、膝の手術をしに東京へ行きます」
全員が驚いた顔をしている。そりゃそうだろう。いきなりこんな話したんだもん。

俯いた私に代わって繋心が話し出す。
「コイツの膝は、手術すれば今なら現役近くまで戻せるらしい。東京の病院のがリハビリやらの設備が整ってるから、向こうで手術するって事だ。コイツは、膝が完治すればお前らの練習の手伝いができるからって俺に言ってきたんだ。自分が復帰したいとかじゃなく、お前らが勝ち進む為に何が出来るか考えたんだ。昨日の夜俺の部屋で号泣しながらな」
な?と私の頭に手を置く繋心を見上げると、ん。と顎で皆の方を指す。

顔を上げた私の目の前には…皆の笑顔だ。
「舞姫ってかっけーな」
と言った翔陽に続けて、口々に話し出す。
「俺あのサーブお手本にした」
「完治すれば練習手伝ってくれるのか」
「良いレシーブ練習ができそうだな」

少し考え込んでいた孝支先輩が
「ちょっと待って。昨日の夜俺の部屋で、ってどういう事?」
と言った瞬間、時間が止まったかのように皆が停止する。
「コーチの事呼び捨てだし、もしかして…」

「あれ?繋心言ってなかったの?」
「お前が言ってると思ったんだよ」
私達のその会話でざわめきが大きくなる。

「違いますよ。私達は従兄弟です」

「「えーっ!従兄弟ーっ!?」」
またうるさくなった。
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