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【HQ】陽のあたる場所へ

第1章 入学式


入学式から3週間程経っても私には蛍と忠しか友達がいない。
それは別に苦ではない。
2人のことを名前で呼び、彼らからも名前で呼ばれるくらいには仲良くなれたから。



「そういえば優希ちゃんは部活入らないの?」
「うーん…2人は何部に入ったの?」
3人でお弁当を食べていると、唐突に訊ねられてびっくりしながらも、はっきりと答えずに質問で返す。
「俺たちは2人ともバレー部だよ!」
(あぁ、聞かなきゃよかった。)
顔を顰めたのをバレないように、そうなんだ。と返すしかできない。


バレー…か。
こうちゃん、元気かな…?

バレーから離れてから連絡を取っていない幼馴染を思い出し、自嘲気味に笑った。


「ね!部活入ってないなら見学に来ない?」
「…ごめん、やめとく」
誘ってくれた忠には悪いが、今はまだバレーは見たくない。



授業後、部活に行く2人を見送って家に帰る。
昔から部屋に置いてあるバレーボールを抱え込み、ベッドに座る。

バレーは好き。だけど嫌い。
でも…



「おーい!優希!店番手伝ってくれー!」
お店の方から聞こえた声に考え事を振り払い、はーい。と返事をする。



「繋心、暇じゃん」
「さっきまでは忙しかったんだよ!」
隣で店番をするのは、叔母さんの子供。
叔母さんと私の母親は姉妹だから、所謂従兄弟。

小さい頃は、遊びに来る度に一緒に烏養のじいちゃんにバレーを教えて貰ってたから、普通に仲が良い。


しばらく一緒に店番をしていると、ハタキを持って鼻歌を口ずさんでいた繋心が、うわあっ!っと声を上げた。

繋心の目線の先には、国語担当の武田先生。
え?武田先生?なんで?

何か話してるなーとしばらく眺めていると、
「煽ってんのか、てめぇーっ!」
繋心の怒声が聞こえる。
「練習何時からだ、オラァアーっ!」
ん?練習?何の?繋心行くの?
私の頭の中はハテナがいっぱいだ。
「おい優希、お前も行くぞ」
「は?」
意味がわからない。
武田先生は武田先生で
「あれ?岡崎さんじゃないですか。ああ、そういえばあなたはここに住んでいるんでしたね」
なんてニコニコ嬉しそうに言ってくるのみだ。



嫌な予感しかしない。


「嫌だ!行かないから!」

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