第5章 IH予選
コートに入る直前、青城のベンチで及川さんが何かを言った瞬間だった。
何か、青城の空気が変わった気がする。
普段はおちゃらけて、岩泉さんに突っ込まれてばかりだけど、バレーに対しては誰よりストイックで誰より仲間を信じてる。
そんな及川さんを皆知ってるから、だから皆も及川さんを信じるんだ。
(試合前にそんな人の言葉聞いたら、空気も変わるよね)
試合が始まってすぐ、及川さんのツーアタック。
飛雄もツーアタックでやり返すけど、熱くならなきゃいいな。
試合を見ていると、青城がすぐにタイムアウトを取る。
あ、もしかして
「ばれたかも」
「え、何が?」
思ってた事が声に出ていたみたいで嶋田さんに聞き返される。
「普通の速攻と変人速攻の使い分け方」
「え、まじ?早くね?」
滝ノ上さんもビックリしてるけど、
「たぶん伊達工戦をビデオとかで見てたんじゃないですかね?」
それよりも…これで飛雄が焦らないといいけど。
烏野のテンポがどんどん速くなっていると感じると、烏野のセッター交代。
飛雄に変わって孝支先輩が入った。
あ、皆の空気が柔らかくなった。これが孝支先輩の力。
ブロックの入れ替えをしたり、青城の速攻を読んだり、きっと孝支先輩の指示で得点を重ねる。
相変わらず青城リードだけど、孝支先輩が入った事で確実に変わったと思う。
ただ、追いつけなかった。
1セット目、15ー25。