第5章 IH予選
伊達工のリードブロックは"凄い"の一言に尽きる。
高いし速い、それに広い。鉄壁の名も伊達じゃない。
スパイクがブロックに捕っても、まだ大丈夫。
まだ烏野には最強の囮が居るんだから。
変人速攻が決まって会場全体が驚くのがわかる。
(そりゃあ、普通はあんな速攻見た事ないよね)
そこからは一進一退の攻防が続く。
烏野のレシーブが乱れてからの変人速攻。
それで伊達工は思ったんだろうね。
("10番を止めなければ"って)
翔陽が光れば光る程、相手のブロックは目が眩む。
さあ、囮が光ってきた所で、烏野の本領発揮だ。
「良かった、男子の2回戦まだやってる」
声のした方を向くと、烏野の女子バレー部の人達だ。
ペコリと頭を下げたところで、
「お、繋心とこの…優希ちゃんだったか」
さらに向こうから滝ノ上さんと嶋田さんが来た。
こんにちは。と挨拶だけして、
「今良いところですよ」
と言いながら視線をコートに戻す。
夕先輩のブロックフォローから飛雄がトスを上げたのは、バックアタックに跳んだ旭先輩。
誰もが翔陽に上がると思った所で、エースの前の道を切り開いた。
パイプ貫通。
そこからも取って取られてを繰り返して、第1セットは25ー19で烏野。
2セット目。
旭先輩は鉄壁3枚に捕まるも、変人速攻を使いながらリードしている。
烏野のマッチポイント、ネット上の押し合いで此方のコートに落ちる瞬間、夕先輩が足で上げた。
反応とか、そういうレベルじゃない。反射。
上がった瞬間、
「「「もう一回っ!」」」
と叫んだ孝支先輩、夕先輩、翔陽に反応して、私も手摺から身を乗り出す。
十分な助走、全力のジャンプ。
旭先輩のスパイクはブロックを弾き、ボールはネット上を辿って、相手コートに落ちた。
25ー22。セットカウント2ー0、勝者は烏野。
旭先輩、私も"頂の景色"見せてもらいました。
「それにしても優希ちゃん、トンデモ速攻と普通の速攻ってどうやって使いわけてんだ?」
「ラリー中にそれらしい合図とかなかったよな」
滝ノ上さんと嶋田さんの疑問に
「ふふ、秘密です」
と言って笑うと、なんでだよ。って突っ込まれるけど笑って誤魔化す。
「次の試合には分かると思いますよ」
だって次はきっと青葉城西。
及川さんは頭がキレるから、きっとすぐにバレる。