第5章 IH予選
試合後、戻って来た皆と隣コートの試合を見る。
青葉城西の初戦だ。
「そういえば青城とは練習試合やったんだっけ」
隣に座る蛍に聞くと、うん。と頷いて
「あの人はピンサーだけでセッターは他の2年生がやってたけどね」
と及川さんを指差して説明してくれる。
「セッターってさ、オーケストラの"指揮者"みたいだよね」
不意に呟いた一言に周りの皆からも視線を感じる。
「同じ曲、同じ楽団でも、指揮者が代われば"音"が変わる。それで及川さんは青城っていうチームを熟知して、100%の力を引き出せるって感じかな」
そう思わない?と繋心に言えば、周りの皆は黙ってしまった。
「大王様かっけえ!早く試合したい」
「おう!サーブ俺狙ってくんねえかな、とりてえ!」
「ノヤさんもかっけえ」
「あ、オイ見ろ翔陽!テレビだぞ」
「えっテレビっ!?」
騒ぐ夕先輩と翔陽を除いて。
「コラ〜そこの中…小学生かな?少し静かにね」
「「しょっ…スミマセン」」
ブフーっと笑った3年生と同じ様に私も吹き出してしまった。
「背だけなら優希も小学生だよね」
と言って笑っている蛍には、とりあえずお腹に軽くパンチしておいた。
青城が危なげなく勝ったところで、学校へ戻った。
「バレー部がテレビに写ってますよ〜」
と職員室に居た先生の声で皆が職員室に走って行ったのを横目に、バスの中に忘れ物がないかを確認してから遅れて職員室に入る。
入った時のテレビ画面には及川さんが写っていた。
ー烏野高校についてー
『いいチームですよね!全力で当たって砕けてほしいですネ!…あ、でも、あの子だけは砕けてほしくないなぁ…あっ!優希ちゃーん!見てるかなー?ウチに転校して来るの待ってるからねー!』
……は?
皆無言だし。目で訴えるのヤメテ。私にも分からないから。
「よーし、それじゃあ…やるか」
と言った無表情の大地先輩について体育館に向かう皆も無表情。怖い。
ミーティングと少し練習をして解散。
…じゃなかった。
「優希、及川のアレはどういうことだ?」
ん?と笑顔で聞いてくる大地先輩がなんか怖い。
怖いからちゃんと話した。
英達と遊んだ時に偶然会った事。その場の雰囲気で一緒にご飯食べた事。何故か気に入られた事。
「詳しくは予選終わったら話しますね」
と言えば、空気を読んでくれたのか皆納得してくれた。