第5章 IH予選
試合前のアップ。
伊達工は部員数も多くて、コート全体が伊達工色という感じだ。
レシーブ練習が始まっても、皆何処と無く緊張しているというか…
おそらく、旭さんが部活から離れた原因が3月に0ー2で負けたという伊達工との試合だと思う。
皆、というか2.3年生はどこかにまだ負けるイメージがあるのかもしれない。
私に出来ることはないのかもしれない。
でも、何か言えることや出来ることはないのだろうか…
「ローリングサンダァー!アゲインッ!」
私の考えは夕先輩の声に遮れた。
「ノヤっさんナイスレシーブ!キレっキレじゃねえか、技名以外」
「技名もキレっキレだろうが」
「アゲインも教えてぇ〜」
「前のと何が違うんですか」
「また西谷は…今の普通に拾えただろ」
プッスーと笑う蛍と忠と同じように、呆れている繋心の隣でボールを拾いながら、ふふっと笑う。
「よっしゃあ!心配する事なんか何もねえ!皆前だけ見てけよォ!背中は俺が護ってやるぜ」
やっぱり夕先輩はカッコイイ。
皆の空気がいつの間にかいつも通りだ。
守備だけじゃない。リベロの重要な仕事は、コートの後ろからのチームの鼓舞。
「本当に優秀なリベロだよ、夕先輩」
と呟くと、だな。と隣の繋心も頷く。
アップが終わり、2階席に行こうとした所で歩を止めて皆を振り向く。
皆が此方を見ているのを確認してから
「見てますから!勝つところ」
と2階席を指差して挑戦的に笑えば、皆も二っと笑ってくれた。
「おう、ちゃんと見てろ」
という夕先輩の言葉を背に、私は2階へ上がった。