第5章 IH予選
IH予選1日目。
仙台市体育館に着いた私達が最初に聞いた言葉は、
「ー確か、"堕ちた強豪、飛べない烏"」
皆の顔が怖い。目が死んでる。
絡みに言った龍先輩を大地先輩が回収する。
潔子先輩と話しながら歩いていると、私達の周りを龍先輩と夕先輩が威嚇しながらグルグル回り始める。
びっくりして潔子先輩にしがみつくと、潔子先輩は、やめなさい。と持っていたバインダーで2人の頭を叩く。
「優希こっち」
不意に名前を呼ばれた方を向くと、蛍が手招きしていたので、潔子先輩に断ってそちらへ行く。
「さっきの先輩たち何だったんだろう」
と聞いても、さあ。としか答えてくれない。
何か理由知ってそうだったのに。
てか何で呼んだんだろ。
「私横断幕取り付けてきますね」
「1人で大丈夫?」
潔子先輩に心配されたが、大丈夫です!と言って2階席に行く。
ついでに自分の座席も確保してから皆の所へ戻ると、皆は着替えている最中だった。
アップの為に移動すると、
「あっ、らっきょヘッド!と、大王様…っ」
という翔陽の声が聞こえる。
ボールの準備をしながら翔陽の目線を辿ると、
「やっほートビオちゃんチビちゃん、元気に変人コンビやってるー?」
という及川さん。
なるほど、大王様って及川さんのことか。と思っていると、目が合った及川さんが
「あっ!優希ちゃーん!及川さんだよー!会いに来たよー!」
と思いっきり手を振っていたので、苦笑いしながらもつい振り返してしまった。
あ、岩泉さんに殴られた。
アップが終わった所で私は急いで2階席に行く。
マネージャーは1人しかベンチに入れないから、私は2階席からの応援だ。
席に行くと周りは青城レギュラーの皆さん。
「優希ちゃんっ、及川さんに会いに来てくれたのっ」
という及川さんの声で私に気付いた松川さんと花巻さんが手を振ってくれる。
私も手を振り返して席に座ると、当たり前のように隣に英が座る。
「なんで国見ちゃんが優希ちゃんの隣に座るのっ」
「親友なんで」
「俺が隣に座りたかったのに」
喚く及川さんに、座ればいいじゃないですか。と私の逆隣を指差す英。
うぐ。と呻きながら私の隣に座ると、その及川さんの目の前に岩泉さんが立つ。
気づかずに勇太郎と話す岩泉さんに
「岩ちゃん邪魔っ!見えないっ」
と叫んでいると試合が始まった。