第5章 IH予選
IH予選前日。
練習が終わった時、
「あ、もう1つ良いかな、清水さんから」
と武田先生が言った時、私は気付いた。
「潔子先輩!できたんですねっ」
「うん。激励とかそういうの…得意じゃないので…」
そう言って先生と一緒に例の横断幕を持って2階席に昇る潔子先輩。
「なに、優希は知ってるの?」
「うん、見てればわかるよ」
ふーん。と言う隣の蛍も気にはなってるみたい。
バサっと広げられた真っ黒の横断幕を見て、皆驚いている。
「が…がんばれ」
と言った潔子先輩は2階から降りて、端に立っていた私に抱き着く。
いきなりのことに驚いて、後ろ手に持った紙袋を落としてしまうも、誰にもバレてないみたいでホッとする。
潔子先輩の激励に3年生と2年コンビは、ぶわっと涙を流す。
こんなの初めてっ。と言う大地先輩の横で頷く3年生と、声すら出てない2年コンビ。
明日の気合いは十分だ。と思った瞬間、気を抜いたのがいけなかった。
「コレ、貰って良いんだよね」
ハッとして蛍の方を向くと、その手には私の作ったユニフォーム型のマスコットのお守り。
「いや、あの、それは…」
と吃っていると、
「月島!それ何だー?」
という翔陽の大きな声で皆に気付かれてしまった。
「全員分あるみたいですよ」
あっという間に紙袋を大地先輩に渡す蛍を睨みつけると、
「せっかく優希が作ったんだから」
と言って頭を撫でられる。
うぐ。と唸りながらも、
「これ俺の背番号!」「ノヤっさんだけ色違うのカッケー!」
なんて言っている皆を見ると、蛍に感謝しなくてはいけないかもしれない。
「あれ、優希ー3つ余ってるよー」
あ、それはね。と、翔陽から受け取った紙袋を持って潔子先輩と武田先生、繋心にお守りを渡す。
皆のには背番号を刺繍してあるけど、3人のは背番号の代わりに"烏野"と入っている。もちろん自分の分も作ったから私もお揃いだ。
「私達のもあるんだ。ありがとう優希」
と言ってまた私を抱き締めてくれる潔子先輩に、私も恥ずかしくなって抱き着く。
「1回戦、絶対勝つぞ!」
「「「うおおおス!!」」」
気合いは十分みたいだ。