第3章 GW合宿
「ー俺達は血液だ。滞り無く流れろ。酸素を回せ。脳が正常に働くためにー」
なにあれ、カッコイイ。
"脳"というセッターの為に、音駒はどんなプレイを見せてくれるのか。
ワクワクしながらペンを片手にノートを広げて、私もコートに集中する。
一言で言えば、繋ぐバレー。
ほとんどボールを落とさずに、しかもレシーブはセッターの頭上に。
プリン頭のセッターは鋭い観察眼を持ってて、日向くんと影山くんの超速攻も防がれた。
フェイントも上手い。
日向くんの速攻に着いて行った1年生はすばしっこいし。
1セット目は25ー22で音駒が取った。
2セット目が始まっても、日向くんはブロックされ続ける。
何度も何度も何度も。
心が折れそうな所なのに、日向くんは…笑った。
そして、普通の速攻を覚えようとしている。
ふふ、面白い。
(烏養のじいちゃんが昔言ってた。"翼"がないから、人は飛び方を探すのだ…って)
日向くんは、まさにその通りだ。
それにしても…音駒は安定感がある。
前3人囮のバックアタックからのAクイック。そして1人時間差。
旭さんのスパイクを綺麗に返すリベロは流石としか言えない。
そして25ー23で音駒。
セットカウント2ー0で音駒の勝ちだ。
バレーはボールを落とした方が負ける。
これが"繋ぐ"ということ。
「もう一回!」
日向くんの声でまた試合が始まる。
2試合目
22ー25、24ー26で音駒。
3試合目
25ー27、30ー32で音駒。
1セットも取れないのは、なんか悔しいな。
でもそれだけ、まだ伸びる要素が沢山あるんだ。
日向くんは、もう一回!って言ってるけど、皆バテバテだから。
それに、音駒の人達は新幹線の時間も迫ってるから、急いで皆で片付ける。
潔子先輩が烏野のボトルを片付けてくれてるから、私は音駒のを片付ける。
軽く濯いで、水分を拭き取った後、体育館に持って入る。と、研磨さんが影山くんにガン見されている。すごい迷惑そうだ。
流石に可哀想すぎて、研磨さん。と呼ぶと逃げるように此方へ来る。
「なんか…すみません。うちのセッターが…」
「うん。でも助かったから」
「ふふ、それなら良かったです」
「優希は…何か安心する」
ボトルを一緒に片付けながら話していると、結構仲良くなれた気がする。番号とアドレスも交換したし。