第15章 長期合宿後編
「必殺技っ?」
目を輝かせてる翔陽に、おうよ。とドヤ顔の光ちゃん。
「いいか、この技はな、言うなれば動と静による揺さぶりだ」
うお、うおぉ…?と翔陽は分かっていない。
「光ちゃん、翔陽ハテナ浮かんでるから」
おーい。と言いながらも、こっちはこっちで話し続ける。
「またカッコよさげに言う…」
「お前何の事かわかんの?」
「予想がつきます」
「優希もわかってんの?」
「光ちゃんの考えそうなことはだいたい…」
黒尾さんは分からないみたいだけど、赤葦さんはやっぱり分かるみたい。
「この技はな、逃げる為に使うもんじゃねぇ。完璧なタイミング、完璧なトス、完璧なスパイクの体勢、強烈なスパイクが来ると誰もが思った時、何より自分が強烈な一発が打てると思った瞬間が好機!」
「「嘲笑うように、カマせ」」
でしょ?と二ヒヒと笑いながら光ちゃんに言えば、
「俺がキメたかったのにーっ!」
と言いながらも、翔陽にフェイントの良さを説明してる。
「優希お前、台詞までよく分かったな」
「だってフェイントの良さを光ちゃんに教えたの私ですから」
苦笑いしながら黒尾さんに言うと、なるほどな。と頭をくしゃっとされた。
「…あ!そろそろ行かないと食堂閉まっちゃいますよ!」
ふと体育館の時計を見て言えば、メシーっ!と目の色が変わったのが半分、そうでもないのが半分。
ゾロゾロと食堂へ向かう中、
「そういえば、やっと赤葦さんのトス打てました」
と一番後ろで隣を歩く赤葦さんににっこり笑いながら話しかけると、
「約束だったからね」
赤葦さんも微笑んでくれる。
本当に長かったよ。と呟いて私の頭を撫でる赤葦さんを見て、何故か昔を思い出す。
ーーーおおきくなったら、ぼくのトスうってね。やくそくだよ。ーーー
なんで、今…
赤葦さんは、やっぱり…
立ち止まって赤葦さんを見上げる。
「あの…赤葦さんの、なま…」
「おぉーい!優希!赤葦!早く来いよーっ!」
光ちゃんに遮られて、仕方なく歩き出す。
何か言いかけたよね?と言う赤葦さんに、いえ…と歯切れ悪く答えると、
「後で連絡するよ」
赤葦さんが私の耳元でコソッと囁く。
ドキッとして、ほぼ無意識に頷くと、じゃあ木兎さん煩いし行こうか。と、また歩き出した。