第15章 長期合宿後編
「そうだ!…さっきのブロックの手に軽く当てたやつ、ワザとですかっ?」
翔陽は、さっきの光ちゃんのプレイに興味があるらしい。
「おう、リバウンドだ」
「リバウンド…!かっけぇえ!」
翔陽は素直だなぁ。なんていうか…
「チビちゃんは天然煽て上手だなぁ」
そう、黒尾さんの言う通りだ。
それでも光ちゃんは嬉しそうに、
「今打ったら絶対ブロックに捕まるって時は、ワザとブロックにボールを当てて跳ね返ってきたところで攻め直すんだ」
翔陽も感心しながら聞いてる。
「床に叩きつけるだけがスパイクじゃない。落ち着いていれば戦い方は見えてくる」
そう言った光ちゃんはかっこよかった。
「光ちゃんかっこいいね」
そうかそうか?と少し嬉しそうな光ちゃんに
「木兎さんはバレー以外の時も落ち着いていてほしいんですけどね」
赤葦さんがつっこむ。
そして試合再開。
光ちゃんがレシーブして赤葦さんがトスを上げる。
「優希っ」
はいっと思いっきり踏み切って、蛍の腕の端に当ててブロックアウトを取る。
いえーい。と蛍にブイサインすると、あら悔しそう。
「優希も今狙ったのかっ?」
「え?うん。私には2枚ブロック打ち抜くパワーないからね」
すげー!と目を輝かせる翔陽は本当に素直だと思う。
私のサーブを、ジャンフロとかずりぃ!と言いながらも黒尾さんがレシーブして蛍がトスを上げる。
リエーフのスパイクを翔陽が弾くと、赤葦さんがフォローする。
「チビちゃんラスト頼んだ」
と光ちゃんがアンダーで上げると、ズラリと約190cmの壁が3枚立ちはだかった。
これはもう壁っていうより…傘でしょ。
ここで翔陽はどう切り抜けるか…
…っ!
リエーフの指先を狙ったのか、天井に向けて打った。
「今の…狙ったのか?見事なブロックアウトじゃねーか」
流石の黒尾さんも驚いてる。
「あっ確かにリエーフの手の先っちょは狙ったけど、当たったのはマグレです」
「翔陽ナイス!3枚ブロックで、しかも打ちづらいトスだったのに」
私の言葉に、うへへ。と嬉しそうな翔陽と、
「よく打った!俺は感動した!2mの壁を相手に戦う小さな猛者に、俺が必殺技を授けよう!」
興奮MAXな光ちゃん。
「また大げさな…」
「あれ?190cmの壁じゃなかったっけ?」
「190から2mになった」
私たちの会話も聞こえてないみたい。