第1章 S
「お母さんと志季さん。どうしてるんだろう…。何の話してるのかなぁ…。」
私は不安でいっぱいだった。
その理由はというと、朝っぱらから二人はどこかに行っているはずなのに、現時刻、午後の8時になっても帰ってこないのだ。
「お母さん、また何か変なことを言ってるのかな。志季さん、ちょっと鈍感な所あるよね…。お母さんに変に絡まれて無かったらいいんだけど…。ってゆーか、志季さんは誤解を解いてくれたのかな。」
一人でぶつぶつ言いながら二人を待った。
それにしても暇だ。
二人が帰ってくるまで、どこかに行くことも出来ない。
私は、高校時代からの友達である双葉にこの一件を聴いてもらうことにした。
早速携帯を手に取る。
『もしもし?急にどうした?唯愛。」
「双葉ぁぁぁぁぁぁぁっ。あのあのあのあの、聞いて!!」
『もう落ち着いて…笑。で、何があったの?』
「志季さんが、お母さんに連れていかれちゃった。」
『は?ねぇ、唯愛。そんなに仕事大変なの?脳にまで影響きちゃった?』
「違うよぅぅぅぅぅぅぅ。マジなの!!朝、志季さんが家に回覧板届けに来てくれて、そこで私の服に埃がついてて、志季さんが取ってくれて、私が泣きそうになって…なったから、志季さんが抱きしめてくれて。そしたらお母さんが家に来て、私と志季さんを恋人関係だって間違われて…そしたら志季さん連れていかれちゃった。」
『なんか、嘘っぽいけど妙にリアル。とにかく、その話がマジなら、唯愛は落ち着いてなさいよ。上手くいけば、志季さんと付き合えるんじゃない?』
「付き合うって。無理無理無理無理!!絶対無理!」
『言い切れんの?』
「保証なんか…ないけど。でも、そんなんで付き合っても嬉しくないじゃない。志季さんは私を好いてくれないだろうし。私ばっかりキャーってなって、そのうち飽きられて、さようなら〜だよ。そうなるんだったら、はじめから付き合いたくない。」
『はい。ネガティブな妄想はそこまでね。もし飽きられてさようならってなっても、付き合った事実はあるんだよ?凄いじゃない!!』
「双葉も、妄想はそこまでね。今は別れる別れないの問題じゃないし。そもそも付き合えるかどうかだし。」
『じゃぁ、落ち着いて待ってなさいね。これから夜勤行ってくるわ〜。後後、報告よろしく!』
電話を切られた。