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【ツキプロ】篁志季と私の8日間

第2章 O


私は今日も仕事だ。

「行ってきます」

私はそう言って家を飛び出した。


会社に着くと、鷹先さんの姿は無かった。
昨日の事件のこともあって、解雇されたそうだ。

昨日は無断欠勤をした私への皆からの冷たい視線が怖かったが、今日は一変し、皆揃って心配そうな顔で見てくる。
昨日の事件のおかげで無断欠勤の件は一旦は忘れて貰えそうだ。

「ねぇ。」
そう声をかけたのは同僚の未村さんだった。

「あ、未村さん。何ですか?」

「あんたって、彼氏いんの?」

「え!?」

「いやぁ、昨日の事件のことあったからさ…。」

「えっと…今は…。」

「ふぅん。気になってる人は居る感じなんだぁ。」

「え!?」
的中され困惑状態だ。

そんな未村さんは開けたばかりのミルクティに口を付ける。
私はそれに思わず見とれてしまっていた。

「…私も、1回そういうことあったのよ。」

「未村さんも…?」

「そうそう。それも、鷹先ってやつにね。」

「…鷹先さんってやっぱり変な人だったんですね。」
ますます鷹先さんの事が嫌な人に思えてきた。

「そうよ。私は会社帰りだったわ。」

「え?」

未村さんは語りだした。

「うん。会社帰りに乗った車両にたまたま鷹先が居てね。軽く挨拶したら、向こうがその気になっちゃって。私は電車降りたら家に帰るつもりだったんだけど、見事にホテルに連れられてね。」

「ホ、ホテルですか!?」

「声デカいわよ!」
私はつい大声になってしまった。
「ごめんなさい!」

未村さんはペットボトルの蓋の縁を指で1周なぞってから溜息をついて、また語りだした。

「それでホテルから出てきた所を彼氏に見られちゃったわけ。」

「……それは。残念ですね」

「彼氏と口論になった挙句、結果別れたわ。それを鷹先に愚痴ったら、鷹先は嘲笑ってた。その時はほんと頭に来た。」

私は廊下の一番隅の汚れている所に目を落とす。そこには埃が溜まっていた。

「……まぁ仕方ないわよね。着いて行った私も私。でも私は彼奴を一生許せない。だから、解雇されたって聞いて嬉しかった。」

未村さんは私に笑顔を見せた。そして短く、
「ありがとね。」
と呟いた。

「はい。」
私は未村さんの笑顔に似合う顔は見せられなかったが、それなりの表情をした。

そしてまた埃に目をやる。


何故だか、嫌な予感がした。
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