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【ツキプロ】篁志季と私の8日間

第1章 S


「うん!私は、志季さんが大好きなのよ!」

「そこは強調して2回言うのな」
氷上は本当に呆れていた。

「ほら見ろ。」
志季さんは何故か勝ち誇ったような顔をしていた。

氷上と志季さんは顔を見合わせ、火花を散らしていた。


「ほら、帰るぞ。」
志季さんは改めて手を差し出してくる。

「う、うん!」

私はその手を取り、氷上を後にした。

「な、なあ!唯愛」

「なに?氷上。」

「俺は、こんな男絶対に認めないけど……、幸せでな!」

「うん!氷上こそ!!良い女の人見つけるのよ!」

「…それがさあ、」
氷上は真面目な顔をした。

「なに?」

「実は、俺来月結婚する」

「そ、そうなの!?」

「ちゃーん。ちゃかちゃちゃーん。ちゃかちゃちゃーん。ちゃかちゃ、ちゃーんちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃちゃ、ちゃーん。ちゃっちゃちゃー。」
志季さんは真顔で某結婚式のBGMを歌い出した。

私と氷上は微妙な顔をしながらあえてのスルー。

「だから、さっきのは嘘。本当は、もう大切な人がいる。でも、お前の前だとなんかはっきりしなくて。」

「分かるよ。言い難いよね。やっぱりこういうのって。」

「うん。」

「結婚、おめでとう!お互い、頑張ろ!」

「うん!」

私と氷上は目を合わせ、優しく微笑み合ってから、お互い別々の方向へと歩き出した。


私はこれでハッピーエンドなのだが…この人は。

「なあ。」

「何でしょう?」
私は冷や汗をかいているのを感じた。

「今日1日あったこと、全て教えろ。」

聞かれそうなことを聞かれた。

もちろん、言えるわけないのだが隠し通せるはずもなかった。

ここは正直に…。

「はい。」

私は全てを語り始めた。

────────────────────

語り終える頃には、もう家の玄関前だった。

「ということが今日1日あったのです。」

「まあ、そんなことだろうと思った。」

「え。分かってたの?」
私は驚いた。

「…それ。」
志季さんが指で首筋をなぞる。

「なに?」
私はゾクッとした。

「キスマーク」

鷹先さんが付けたのだろうか。それしか有り得なかった。

「…ごめんね。」

「ちゃんと話してくれたから問題ない。」

「ありがとう」

志季さんは私の腰に手を回して、玄関をすり抜けて、寝室へ向かった。

夜は、これからだ。
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