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【ツキプロ】篁志季と私の8日間

第1章 S


「え、えぇ!?志季さん!?」

私は驚いてしまった。
偶然とはいえ、熱を出してる志季さんがこんな街中にいるとは思いもしなかった。

「何をそんな驚いているんだ?」
志季さんは真顔でこっちをジーッと見てくる。

「熱出してるのに、安静にしておかないと駄目じゃないですか!」
私は強く言い放った。

「…大丈夫だ。問題ない。」

「問題ないって言っても…」

そう言った瞬間、志季さんは私の耳元まで顔を寄せてこう囁いた。
「今は病院帰りだ。熱も大分下がった。心配かけてすまない。」

「…志季さんっ!」

「何をそんなに照れているんだ?」

「志季さんのせいじゃないですか!きゅっ、急に!」

すると今度は手を強く握ってきた。

「急に…なんだ?悪いか?」

「志季さんっ!!」

私はドキドキで押しつぶされそうだった。
志季さんの体温が手から伝わってくる。男の人を感じさせられる尊い手。
そんな尊い手を私なんかが握って良いのだろうか…。

事が起こったのは、そんな時だった。

「なんだそれ。」

隣にいた氷上が呆れたのか、怒っているのか、こわい顔をしていた。

「なんだお前。」
志季さんがそう言った。

「…フッ。お前なぁ。」
氷上の顔色が怒りへと変わったのが分かった。
「大概にしとけよっ!!」
そう言いながら志季さんの胸ぐらを掴む。

「やめて氷上っ!」
私が間に入る。

「お前、こいつとそういう関係なのかよっ!どうなんだ!?」

「今はまだ…わからない。」

「は?なんなんだそれ!」

「…なんでそんな怒ってるの?」

「…お前にはちゃんとした男と付き合ってほしいんだよ!さっきみたいな上司がこの世には存在するんだ!お前に危ない目にはあってほしくない!…なのに、こんなヘンな奴。」

「…志季さんは、変じゃないよ。確かに少し変り者だけど、でも…」
返す言葉がなかった。
志季さんは……変な人だ。
それに危ない人だ。急に襲われたのだから…。

「でも?」
氷上にさらに問いかけられる。

「俺のことが好きなんだよな?」
志季さんが真顔で私に聞く。

流石に氷上もこの一言には唖然としていた。
もちろん、私も。

「なぁ、こいつ、絶対ヘンだろ。」

「だねー。」
私は軽く流した。

…いや、今はそうじゃない!
自分の気持ちを氷上に伝えなきゃ!

「ううん!私は志季さんが大好き!!」
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