第1章 S
「ちょっと、なにやってんの?」
そこに立っていたのは、私の幼馴染であり、元カレである、氷上だった。
「今すぐ唯愛から離れないなら警察呼びますけど。」
氷上はいつもふざけてて、こんなに真剣になることなどないのに、今日はいつもと違った。
「…氷上。」
鷹先さんは焦っていた。
「お前誰だよっ。ヒーロー気取りか?あァ?」
「お前っ。」
氷上は鷹先さんに殴りかかろうとした。
「氷上っ!暴力はダメ!」
「唯愛、こいつ言うこと聞かないみてぇだから、警察呼べ!!」
「う、うん!」
私は服を着て、携帯を手に取る。
そして、急いで警察に電話をした。
思ったよりも早くに警察は来てくれた。
「大丈夫ですか〜?」
鷹先さんはますます焦っていた。
「はぁっ!?マジで警察呼んだのかよっ。」
「ちょっと君、署で詳しく話をさせてもらおうかな。」
「…ちっ。」
鷹先さんは舌打ちをしながら、私たちの横をすり抜けていった。
「大丈夫?」
氷上は優しく声をかけてくれた。
「うん。一応。」
「あいつ、お前のなんなんだ?」
「上司。良い人で、仕事も出来て…今朝までは無断欠勤した私を叱ってくれたんだけど…まさかあんな人だったとは。」
「ふーん。お前って昔っから騙されやすいタイプだよな。」
「どういうことよっ。」
「ってかお前、上京してたんだな。こんな形で再会するとは。」
「そうだね。この前から一人暮らし始めたの。」
「一人暮らしか。これから気をつけろよ。さっきみたいな人はいっぱいいるからな。」
それを聞いた途端、私は焦った。
もしかしたら、志季さんも…策士だったり?
「気をつける。」
「おうよ。…危ないから家まで送ってあげる。」
氷上は照れながらそう言っていた。
「ありがとう。」
「お前、誰かと付き合ってたりするの?」
「急に何!?」
私はびっくりしてしまった。
「いや、いい人見つけたのかなぁって思っただけ。」
「まだよく分からない」
「ふぅん。まぁ、後々聞かせてもらうよ。」
「氷上は?どうなの?」
「んん?俺?俺は普通……」
氷上がそう言いかけた時、私は誰かに掴まれた。
そして、そのまま抱かれた。
「きゃっ。」
「お、おいっ!お前誰!?」
「唯愛とイチャつくな。」
そう言ったのは志季さんだった。