第1章 S
「昨日の朝、芸能人の方が家に来たんです。」
そこから私は全てを鷹先さんに話した。
鷹先さんは真剣な眼差しで話を聞いてくれた。
「それって大丈夫なの?」
「え?」
「唯愛ちゃんは、襲われたりして、怖くなかったの?」
「あ、はい。そこは特に…。むしろ、私もその人のファンでしたし、ちょっと興奮しちゃったくらい………って何言ってるんだろう私!!」
饒舌に話してる自分が恥ずかしい。
「そうか。」
「はい。」
鷹先さんは不安な表情をしていた。
「僕は上司としてじゃなくて、個人として君に忠告しておくけど、僕は唯愛ちゃんの恋愛に反対だよ。芸能人ってことで、もし周りにこれが知られたらこれからマスコミが殺到するだろうし、唯愛ちゃんが傷つくかもしれない。それに、急に襲ってくるような奴と付き合うなんて僕は考えられない。これから先が不安だよ。もしかしたら体目当てかもしれないし。」
「……鷹先さん。」
真剣に話してくれたおかげか、少し目が覚めたような気がした。
「唯愛ちゃん。もう一度よく考えてみて。」
でも、私の意思は固かった。
「確かに…鷹先さんは正論です。でも私は好きなんです。どんなことが待っていようと、この恋愛にかけてみたい。」
「……そうか。」
「はい!」
「なら…こんなことを毎日のように沢山されても?」
そう言うと鷹先さんは強引にキスをしてきた。
そこにいつもの優しい顔は無かった。
「や、やめてくださいっ!」
「…練習だと思ってよ。」
“嫌だ。こんな上司!!”
すると、鷹先さんは私の体に手を伸ばす。
ここは路地裏だと言っても、一応有名な街中だ。
こんな所を誰かに見られたら…。
「やめてくださいっ!やめてくださいっ!!」
「これは唯愛ちゃんが望んでる未来だよ。」
「ち、違います!!…警察呼びますよ!?」
服はもう脱がされていた。
春の冷たい空気が肌に刺さる。
「こんな状況で?」
鷹先さんは舌をぺろっと舐め回した。
私を獲物の様に見ていた。
「…誰か助けて!!!!……し、志季…志季さんっっ!」
志季さんが来るはずもないのに、私は叫んだ。
もう誰かに見られてもいいと思った。
とにかく、助かりたかった。
すると、近くに人影が見えた。
見慣れた人がすぐそばに立っていた。