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【ツキプロ】篁志季と私の8日間

第1章 S


「匂うつもりはなかったの。ただ、服を持ち上げたらいい香りがしたから。」

私は言い訳をした。

「お前はもっと…素直になるべきだ。」

「素直…?」

“どういう…意味?”

「誤魔化してばかりじゃなくて、もっと思ったことを言ってみろ。もしかして、仕事でもそうやって誤魔化してるのか?違うだろ?ちゃんと思ったことを話して、相手にぶつけてみろ。そしたら、お前の立場、印象が変わるはずだ。」

志季さんは真面目な顔をしてそう言った。
私の知ってるいつもの顔だった。
仕事をしている時の顔。さすが、リーダーだ。

「……うん。」

“思ったことを言うのも大切だけど、さっきみたいな恥ずかしいこと、言えるわけないじゃん。”
私はそう思いながら渋々返事をしたのだった。

「それでいい。」

志季さんは私の頭に手を置いた。
また顔が熱くなってしまう。

「志季さん…。」

「あ。」
志季さんは思い出したかのように話始めた。

「そういえば、何故俺の名前…知ってるんだ?」

「それは…志季さんのファンだから。」

「俺の…ファン。」

「SolidSのこと、知ってます。CDも買って、SolidSが載ってる雑誌は必ず買ってるし、グッズとかも…色々。」

「なるほど。だからか。俺のこと、色々知ってるのか?」

志季さんはどこか不安げな顔をしていた。

「雑誌とかネットに載ってるあることならそこそこ。あ、でも知らないこともまだまだあると思う。」

さっきみたいな強引で激しくてSっ気のある志季さんは見たことがない。

「俺は……お前のことを全く知らない。わからない。」

急にどうしたのだろう。

「そりゃそうじゃないかな。どうしたの?」

「俺は、お前のこともっと知りたい。もっと知って、ちゃんと対等になれるように。」

恋人同士が話す会話だと思った。
何が起こっているのか、収集がつかない。

「どういうこと?」

「俺はお前と正式にお付き合いがしたい。」

志季さんは真面目に話していた。

「……それは駄目だよ。だって志季さん、恋愛禁止じゃ…」

そう言いかけた瞬間、抱きしめられた。
熱のせいで少し火照っている身体を私は支えた。

「そんなこと、考える隙もない程、お前を好きになってしまった。お前が欲しい。」

「私も、志季さんが欲しいけど…」

気が付いたら夜はすっかり明けて、清々しい朝だった。
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