第1章 S
アレから数時間が経った。
志季さんは、隣でスヤスヤと寝ている。
きっと、疲れたのだろう。
“あんなことしておいて、先に寝ちゃうなんて”
私の表情筋が緩む。つい笑ってしまう。
プレイ中は激しくてSになるクセに、普段はこの寝顔みたく優しくて真面目で…。
そのギャップに萌えてしまう。
「……?」
志季さんが目を覚ました。
「あ、ごめんなさい。起こしちゃったかな。」
志季さんはまだ眠いはずの目を擦りながら身体を起こす。
「……唯愛。」
急に名前を呼ばれると、ドキッとしてしまう。
「………何か…?」
私は自分の頬が火照っているのがわかった。
照れ隠しのつもりで顔を逸らした。
「……」
名前を呼ばれたものの、志季さんは何も答えなかった。
だが…、急に志季さんが私の方に近づいてくる。
“ま、また。侵されちゃうのかな!?”
私は焦った。が、予感は違った。むしろ、大変な方向に進んでしまった。
志季さんのおでこが私のおでこにぶつかる。
「あつっっ。」
志季さんは熱を出していたのだ。
「すまない。頭が重くて、身体全身がダルい。これは、多分熱だ。」
「あ、うん。多分じゃなくて絶対そうだと思う。」
とりあえず私は体温計を渡した。
「熱、計って!あと…服着よ?」
時計の針は4時を過ぎていた。
いつヤっていたのか、正確に時間は分からないけど、何時間かは経ったはず。
まだ肌寒い春に、服も着ないで寝ていたら熱も出るだろう。
「あぁ。そうだな。」
そう言って服に手を伸ばす。
だが、思うように身体が動かないのか手を伸ばしても服が取れない。
「俺の服、取ってくれないか?」
志季さんは淡々とそう言った。
私はドキドキしながら服に手を伸ばした。
服を持ち上げた瞬間、フワッと柔軟剤の香りがした。
“これが…志季さんの香り。”
私の鼓動は加速していった。
志季さんの香りはとても良い匂いだった。
優しくて、でもどこか大人の色気を感じさせる匂いだった。
まるで、志季さん本人のような…そんな気がした。
「何やってるんだ?」
私は自分が変なことをしていることに気が付き、すぐさま志季さんに服を渡した。
「あ、はい!服!!」
私はバレてないか不安だった。
「お前、さっき…匂ってたのか?」
思いっきりバレていた。