愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第7章 愛の唄 Ⅵ
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「……っ、はぁ、はぁ……!? こ、ここは……?」
呼吸が整わない。私は、何とか上半身に力を籠めて、体を起こす。気が付けば、身体中が汗でぐっしょりだった。汗で服が張り付いて、気持ち悪い。
「ここは、分教会の私の部屋です。もうそろそろ限界かと思ってはいましたが、自力で目を覚ますなんて、お強いですね。」
辺りは暗いが、部屋に吊るされた電球のお蔭で、最低限、周囲の状況ぐらいは分かる。
「あ……。あ、まくさ……?」
「はい。」
彼は、その透明な双眼を、こちらへと向けてきた。
「今の、全部、あ、あまくさが、みた……、もの……?」
「……。何を、見たんですか?」
天草は静かに尋ねた。どうやら、私が夢で何を見たかまでは、天草も分からないらしい。
「いちたくん……、が、火で焼かれて……。どこか、海が見える高いところで、天草が刀を持って戦ってたり……、あとは、首が……、うっ……。」
最後の辺りは、声にならなかった。
「あぁ、思い出さなくていいですよ。えぇ。その2つでしたら、私の生前の記憶で間違いありません。」
「あ……。」
「まさか、本当に見るとは……。」
「?」
天草は、そう言って顔を横に向けた。
「え?」
「いえ。仮契約のパスは繋げたのですが、貴女が本当に望まない限りは、あまり詳しくは見られないよう、制限ぐらいはかけていました。何の覚悟も無しに見るには、あまりにも惨い光景ばかりですから。ですが、貴女は私の生前を見てしまった。……全く、無茶をするにも程があります。」
そう言って、天草は眉を下げて溜め息を吐いた。
「制限って、あの扉のこと?」
「えぇ。そうです。また、随分と情熱的な開け方でしたね……?」
天草はそう言って、ニヤニヤと此方を見た。ん? ちょっと待って!?