愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第8章 愛の唄 Ⅶ
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―――――彼の願いは、『全人類の救済』。
善なる者も、悪しき者も、富める者も、貧しい者も。
健康な者も、病める者も、聡明なる者も、愚かな者も。
美しい者も、醜い者も、幸福な者も、不幸な者も。
愛する者も、憎い者も、全て。総て。凡て。すべて。
どのような人間であろうとも、等しく救う。
それがたとえ、彼の大切な存在を害した、憎悪すべき対象であっても。
“人間”を愛さずに、“人類”を深く愛すると、自らを歪めて。
もう、そうするしか道は無いのだと、彼は、彼を閉ざし続けて。
それはなんて、かなしいことなのだろう。
それでも時々、彼の胸には、一節の唄が流れます。
それは、遠く擦り切れた記憶。
それなのに、ひどく懐かしく、優しい。
「あぁ、俺は――――――」
彼は、振り返ることなく。
世界の果てへと、歩き続ける。
『愛の唄』・完