愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第7章 愛の唄 Ⅵ
広がる光景は、まさにこの世の地獄だった。
殺されていく人間が誰かは分からない。でも、首が刎ねられる。最初は私も、それを見た瞬間に、心臓が止まるかのような感覚に陥った。でも、3人、4人と見ていくうちに、麻痺していく。これほどまでに凄惨な光景など、私の人生でなんて見たことが無いのに。10人、20人。次々と刎ねられていく、首。首。首。
―――――首、首、首。
――――首。首。首。
首が繋がっている人間よりも、首が無い人間の方が、多いだなんて。なんて可笑しな話なのだろう。
この一揆では3万7千人の人々が、命を落としたと言われている。
その地獄の中で、ほんの小さな声が、誰に聞こえることも無く、紡がれる。
「貴方たちに、何の罪があるというのか―――――。」
――――首。首。首。
彼が呟いている間にも、人間の首が、あちらこちらで、次々と刎ねられている。
「―――――あぁ。私を信じて、ついてきてくれたこと、ですね……。」
――――首。首。首。
彼は、力なく、その光景を見ている。いや、本当は、ひとりでも助けたい。その為ならば、何でもすると、彼の魂は叫んでいる。それは、私にまで、はっきりと伝わってくる。私まで、震えている。
「私の命なんて、喜んで差し出すのに。」
――――首。首。首。
死体が積み重なり、折り重なり、やがて山が築かれる。そこへ火が放たれる。
燃えている。人も、家も、何もかも。
「その代わり、彼らを救う術を、教えてほしい――――……。」
微かなつぶやきは、鎮魂歌のように。誰にも聞かれることもなく、消えていく。
辺りはもう、火の海だった。
いつの間にか、視界が黒く染まって、私はそれ以上、何も見えなくなった。
先ほどから、随分と気分が悪い。夢の中なのに、頭がクラクラする。それでも、私は―――――。