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愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第7章 愛の唄 Ⅵ










 下層から悲鳴とも絶叫ともつかぬ声が聞こえる。天草は、急いで敵の骸から自分の日本刀を抜き取ると、止血もそこそこに下層へと走った。



――――地獄というものに、果てなど無いのかもしれない。
 天草は、止まらない。殺されそうになる仲間がいれば、多勢に無勢だろうが、構わず突っ込んでいった。
「――――ッ!」
 不思議な術も使いながら、ひとりひとり、確実に敵を打ち取っていく。負傷しても、あの不思議な術で止血を行い、戦い続ける。しかし、多勢に無勢だ。疲労と負傷が蓄積していき、相手の攻撃に反応しきれないことも増えてきた。それでも、彼は臆することなく、戦い続ける。傷は間違いなく痛むはずなのに、それを無視して戦い続けた。仲間を護る為に、刀を振るい続けた。




 どれほどの時間が経ったのだろう。分からないが、それにもとうとう、限界が来たようだった。天草は、幾度となく敵の攻撃を受け、止血もままならなくなった。服など、もはや服の形を成してすらいないほどだった。
(―――――ひどい。酷過ぎる……。)
 私はここでやっと、彼がどうしてあれほど傷だらけだったのかを理解した。






『じゃあ、あの……、体の、たくさんの傷跡は……?』
 初めて会った日、風呂場で見えてしまった、傷だらけの上半身。
『見苦しいものをお見せしてしまい、申し訳なかったです。あれらは全て、刀傷ですよ。生前にできてしまった傷が、再現されてしまっていますから。』
 そう言って、眉を下げて笑う彼を思い出す。私は、胸が潰れるような思いがした。







 そしてついに満身創痍の天草四郎は、敵に捕縛されたのだった。その瞬間は、実に呆気ないものだった。彼はもう、抵抗らしい抵抗も出来ないほどに、消耗していた。


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