愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第7章 愛の唄 Ⅵ
私が最悪の結果を覚悟した瞬間、視界は切り替わった。天井に向かって、移動している……? その後見えたのは、敵の頭だった。
(―――!?)
そのまま、天草の身体は床面と平行に移動する。壁を駆け上り、そのまま跳躍したらしい。天草は敵の背後へ着地し、そのまま日本刀を一閃。呆気にとられた2人のうち1人を、側面から斬りかかり、討つ。これで4人。
「――――はっ!」
さらに天草は、懐から短刀を取り出し、残ったもう1人へと投げつけた。相手は咄嗟に右腕でガードしたが、それが運の尽きだった。武器が手から離れた瞬間に、天草は一瞬で距離を詰め、迷わずに心臓へとその刃を突き立てた。この短い時間に、天草は5人もの相手をたった1人で討っている。しかし、まだ半分だ。
その間にも、相手は襲ってくる。天草四郎を討ち取らんと息を巻いている大男が接近してくる。
「天草四郎! 覚悟!!」
正面から振り下ろされる刃を、天草はその刀で受け止める。相手の刃を正面から受け止め、耐えている。天草の腕が、ふるふると震えている。筋力だけでいうならば、相手の方が確実に上だろう。
「……くっ……!」
天草の苦しそうな声が漏れる。
……マズイ。視界の端を、兵士が移動するのが見えた。間違いなく、天草の背後に回ろうとしている。しかし、天草の力では、大男の刃を振り払うことは難しそうだ。
―――――今度こそ、死ぬ。鋭利な死の予感が、私から離れない。
「終わりだ、天草四郎!」
背後から、声が聞こえる。その声と同時に、正面の大男が力を緩めた。天草は、その隙を逃さなかった。
「はッ!」
天草は、大男の膝に、素早く足蹴りを入れた。バランスを崩した大男はその場に尻もちをつくようにして倒れ込む。天草も、それに合わせて、日本刀を大男に突き立てるようにして、前のめり身体を倒した。結果、日本刀は大男の腰の辺りへと深く刺さった。