愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第7章 愛の唄 Ⅵ
階を下りた先は、更なる地獄だった。既に数名の仲間が討たれており、所々に血溜まりが出来ていた。素人の私でも分かる。あれはもう、事切れている。
敵はざっと数えただけでも10人。天草はひとりきり。建物の中はそれほど広くもなく、逃げ場は無い。絶望的な状況だ。兵士たちは、死体を刀の先で突き刺していた。
「幕府に逆らうから、こうなるンだよ。」
「切支丹風情が。」
そう言って、日本刀を死体に突き立てて、グリグリとその肉を抉る。私から見ても、それはおよそ、人間のすることではない。そんなことができる人間を、およそ人間と思いたくない。
「……ッ」
彼が息を呑む音が、確かに聞こえた。
「……!」
天草は、いかなる言葉を発することなく、日本刀を構えて敵へと突っ込んだ。天草が1歩を踏み出すと同時に、足元からばちゃりという水音が聞こえた。もう、それが何かなど、確認するまでもない。
心臓を目がけて日本刀を突き刺す。まずは1人目。それが、戦闘開始の合図だった。2人の兵士が、同時に天草へと斬りかかる。寸でのところで後方へ下がり、攻撃を躱す。
「死ねやッ!」
天草が下がった場所へ、敵は容赦なく攻撃を浴びせる。天草は手にしている刀でそれを受け、何とか斬り返す。天草の刃は違えることなく首へと届き、相手は血飛沫を上げながらその場へ崩れた。これで2人目。
「クソガキ!」
逆上した1人が、こちらを目がけて突進してくる。鬼のような形相とは、まさにこのことだろう。天草は、背後を確認する。――――壁だった。好機とばかりに、左右からも敵が迫ってくる。あぁ、これは本当にマズイ。逃げ場がない。
「――――我が奇跡よ」
小さな声が、聞こえる。祈るように、囁くように。