愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第7章 愛の唄 Ⅵ
この地獄は、加速する。殺されていく人間の数に比例して、加速していく。
だが、地獄に在っても、天草は走る。日本刀を片手に、建物の中をひた走る。仲間を討った人間を、斬る。天草の太刀筋に、迷いは無かった。仲間を殺した相手を、ひとり、またひとりと、討つ。
「――――はッ!」
刀を左手に持ち替えて、右手で何やら不思議な術を使って、相手の動きを止め、その隙に刀を振り下ろす。相手が複数人だろうと、天草四郎は止まることがない。
「いたぞ、天草四郎だ!!」
「はい。私こそがこの一揆の首謀者、天草四郎です。」
この声の中に、どれほどの怒りと悲しみが込められているのだろう。淡々と自らの名を名乗るその声は、微かに震えていた。
天草は、言い終わるが先か、そのまま相手に突進する。相手が持っていた武器を払い、背後を取る。踏み込んで、そのまま相手の心臓へ日本刀を突き立てる。しかし、相手は短刀を忍ばせていた。最期の足掻きとばかりに、相手が天草へ短刀を突き出す。天草は間一髪のところで反応し、深く差し込まれることは避けたが、彼の腹からは血が滴った。
「う゛――――っ!」
天草は、呻き声を漏らす。しかし、左手をその傷に当て、何やら呟くと、小さな輝きと共に血が止まった。今の不思議な光は、止血か何かの術だろうか? 私が天草と会って間もない頃に、天草が、私の指を治療してくれたことを思い出す。
「まだ、まだだ―――――!」
天草は、血に濡れた日本刀を、一振りした。すると、日本刀にべったりとこびりついていた血が、辺りへと飛び散った。彼は、走り続ける。