愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第2章 愛の唄 Ⅰ
異常を察知してから今まで、ダ・ヴィンチは、マスターから求められようが、通信に応じなかった。それは、天草への対策を練る為であり、その状況を天草に悟られぬようにする為であった。それに加えて、バックアップの一切を、マシュとその他カルデア職員へ任せる準備もしていたのだった。
「お構いなく。それよりも、この状況は本当にマズイ。カルデア司令官代理として、この事態は看過できない。それにマスターは、何度もキミに対して、考え直してくれと叫んだ。それを裏切り続けることの意味を理解しているのかな?」
冷静に、怜悧に。ダ・ヴィンチは天草へと問う。
「もう、契約は破棄していますので。」
天草は、聖人のような穏やかな笑みを浮かべると同時に、その拘束を解いた。
「ええ、ですから。マスターはもう、私への命令権を失っています。令呪も、届きません。」
「だから、それがどうした?」
冷静沈着なダ・ヴィンチの瞳の奥には、怒りの炎が、確かに燃えていた。
「そうか……。堕ちたんだな。天草四郎時貞。」
「いいえ。私は、私の願望の為に動いているだけに過ぎません。」
天草の瞳は、ゾッとするほどに透き通っている。
「そうか、そうか……。……ではもう、遠慮も同情も不要だな。キミのような二流サーヴァント、この天才に掛かればすぐに無力化できるということ、思い知ってもらおうか!!」
ダ・ヴィンチは、珍しく、その怒りをあらわにしている。それに対して、天草は変わらずに穏やかだった。