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愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第2章 愛の唄 Ⅰ


「……。痛いところを突かれましたね。確かに、カルデアからの魔力供給路が断たれた今、私の手にあるのは二流宝具のみ。ですが、私だって譲れませんから。」
 天草はゆったりとそう返すが、彼の内心は、それほど穏やかではなかった。ダ・ヴィンチは名実ともに万能の天才である。それは、戦闘であろうとも変わらない。少しでも距離をあければ、強力な魔術が飛んでくる。かといって、距離を詰めれば、詠唱時間ゼロで、超高温の炎に焼かれることになる。それ以上に恐ろしいのは、その多岐にわたる道具の数々だ。多少の対魔力など軽く無視できるほどの物理現象を、攻撃に転用してくる。どの距離でも、何ら油断ならない相手である。しかも、相変わらずカルデアからの通信が繋がっている様子が無い。ということは、あのシールダーが、いつどのようなタイミングでダ・ヴィンチを援護するかも分からないということだ。しかし、考えてばかりもいられない。ここで無為に時間を喰ってしまっては、聖杯が完成してしまう。そうなってしまえば、天草単独でそれを回収することが困難になる。既にカルデアとの契約を切ってしまっているため、『双腕・零次集束(ツインアーム・ビッグクランチ)』は使用不可能な状況だ。その実、天草は確実に追い込まれていっている。
 しかし、天草とて、切り札のひとつやふたつ、備えはある。何とかして、この状況で隙をついて聖杯に接続しなければ、天草の大願は達成できない。だから、天草は今、何を失っても聖杯へと手を伸ばすのだ。

「はッ!」
 ダ・ヴィンチの杖が鈍く輝き、光弾が一瞬の間に天草へと叩き込まれる。軌道までが完全に計算されたそれを全て躱すことは、絶対に不可能だ。それが分かっているからこそ、天草は素直に防御を選択する。黒鍵に最低限の魔力を注ぎ込み、使い捨ての盾にする。しかし、ダ・ヴィンチは、ガード中であろうとも関係なく、天草へと高熱の炎を叩き込んだ。勿論、高い対魔力を備えている天草に、この攻撃はそれほど脅威ではない。しかし、ダ・ヴィンチの狙いは、炎でダメージを通すことではなかった。
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